ホテルチェーン運営企業が導入「社員がChoiceできる人事制度」の中身
グリーンズは全国で展開する自社運営ホテルを対象に、勤務希望地を選べる人事制度を2020年10月に導入後、社員の定着や採用面で効果が見え始めている。「社員がChoiceできる人事制度」という名称が表すように、社員が主体的に選んだ範囲内での転勤とあって、納得度の向上がプラスの影響を与えている。ライフスタイルに合わせた多様な働き方の中でも、中長期的なキャリアを構築できる制度として浸透が進んでいる。
同制度は勤務地区分を旅になぞらえて、五つの区分に設定。各区分は転勤可能な都道府県の数によって、全国転勤が可能な「グローバルジャーニー」、転勤可能な勤務地範囲を5―10都道府県程度とする「カントリートラベル」などがある。転居なしという選択肢もあり、地元志向の社員の働き方も考慮した。
各区分の都道府県は隣接県でなくても選択可能で、例えば北海道と沖縄など細かく設定できる。より遠方に移動する社員への支援を手厚くしており、勤務範囲に応じて賞与、社宅利用年数の上限などの処遇を変えている。
転居なしを基準に、全国勤務可能とした場合は賞与で25%加算するほか、社宅利用の上限を7年に伸ばした。管理職登用の要件も緩和し、全国勤務可能でなくても管理職に就けるようにした。
当初は特定の勤務地区分への偏りを懸念したが、現在までで「社員の区分選択は想定割合に収まっている」(鈴木直子取締役人事本部長)という。導入後、離職率は21年6月期に前期比約2%減少。採用面でも有利に働き、内定通知後の辞退者数は同73%減少した。
中間料金帯ホテルチェーンを全国展開する同社は、ホテルを拠点に地域を観光する「回遊拠点型ホテル」など新たなコンセプトを打ち出し、コロナ禍後を見据えて布石を打っている。今後の出店拡大に備え、同社は人事制度の見直しを通じて、柔軟な働き方ができる環境づくりに取り組む考え。次の課題として、働く時間を選べるなどでトライアルを始めている。