厳罰化される飲酒運転、カーエレメーカーたちが防止に一役
カーエレクトロニクスメーカーが、飲酒運転の防止に向けた製品やサービスの提案を積極化している。背景にあるのは、道路交通法施行規則の改正で一定数の白ナンバー(自家用)車両を保有する事業者に対し、酒気帯びに関する目視などでの確認と記録の保存が4月から義務化される点だ。10月にはアルコール検知器を用いた検査も義務付けられる。飲酒運転が厳罰化され、関心も高まっている中、カーエレメーカーは、対応を模索するトラック運送事業者などの需要に応える。(江上佑美子)
今回の法改正の契機になったのは、2021年6月に千葉県八街市で、飲酒運転のドライバーによる白ナンバートラックが小学生をはねた事故だ。アルコールチェック義務化の対象に、緑ナンバー(事業用)車両に加え、自社製品の運搬などに用いられる白ナンバー車両も追加されることになった。
パイオニアは4月の法改正に合わせ、クラウド型運行管理サービス「ビークルアシスト」に、ドライバーの酒気帯びの有無に関する確認結果を記録する機能を追加する。一定台数以上の自動車を使用する事業所には「安全運転管理者」の選任が義務付けられている。ビークルアシストの追加機能で、同管理者の作業負担軽減に寄与する。
パイオニアのモビリティサービスカンパニービジネスマーケティング部の大野耕平マーケティングマネージャーは、今回の法改正について「アルコールチェックの強化に目が行きがちだが、安全運転管理者の負担が増える側面もある」と指摘する。
JVCケンウッドも同管理者の作業負担軽減に役立つ製品を展開する。通信機能付きのアルコール検知器を開発し、10月の法改正に合わせて発売する予定。同管理者が検査結果を手作業で記録、管理する労力を減らせる点を訴求する考えだ。トラック事業者などが対策を急ぐ中、江口祥一郎社長は「間違いなく大きな市場になっていく」と見る。
自動車関連のIoT(モノのインターネット)事業を手がけるトライポッドワークス(仙台市青葉区)は、オートバックスセブンと連携し、クラウド型の携帯アルコールチェッカーを発売した。コロナ禍により直行直帰で勤務するドライバーが増えている中、同管理者が遠方にいるドライバーの酒気帯び確認をしやすくする。
警察庁によると、飲酒運転の死亡事故率は飲酒をしない場合の約8・1倍にのぼる。飲酒運転による死亡事故の件数は減少傾向にあるものの、2008年以降は下げ止まりの傾向にある。