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コロナ禍で「衣料繊維事業」赤字…東洋紡が子会社再編で“強い繊維”絞り込む

東洋紡はコロナ禍で赤字に陥った衣料繊維事業の改革を進める。子会社の再編を決め、4月に新会社「東洋紡せんい」を発足。国内の衣料繊維工場は2024年3月末をめどに3工場を1工場に集約する。アパレル製品の店頭販売が減少するなど、市場環境が厳しさを増す中、販売と製造の両面で競争力を強化する。竹内郁夫社長は「繊維を強い分野に絞り込み、勝ち残りを目指す」と力を込める。

東洋紡は21年3月期、衣料繊維事業で営業赤字を計上した。22年3月期もコロナ禍の影響が続いており、厳しい着地となる見通しだ。23年3月期は反転を見込むものの、コロナ禍以前の事業環境には戻らないとみる。

そこで新会社の東洋紡せんいには衣料繊維事業のリソースを集約し、“選択と集中”を加速する。東洋紡100%子会社の東洋紡STCから繊維事業を分割し、そこに東洋紡STC100%子会社の東洋紡ユニプロダクツを統合して、新会社を発足。さらに東洋紡100%子会社のトーヨーニットを新会社の直接保有子会社とする。繊維事業を切り離した後の東洋紡STCは、高機能材取り扱い商社として存続させる。

新会社社長に就任する清水栄一東洋紡執行役員兼東洋紡STC社長は新会社設立の意義を、「スタッフ部門のような重複する作業をなくしてコストを下げ、強い販売チームを作る」と説明する。

新体制ではスポーツアパレルやユニホーム、中東の民族衣装用生地など、それぞれの分野で特化した強みを発揮する。例えば中東の民族衣装用生地では、現地ニーズに合わせた開発を強化する。

生産面では、東洋紡で国内唯一の衣料繊維生産拠点である富山事業所(富山県射水市)で、紡績の井波工場(同南砺市)と入善工場(同入善町)を24年3月末に休止。紡績工程は織布・加工を手がける庄川工場(同射水市)に移管・集約する。庄川工場での織布生産も規模を縮小し、海外拠点を活用して生産量を維持する。差別化商品は国内、汎用品は海外での生産を基本とし、衣料繊維事業を「再度強い事業にしていく」(清水執行役員)。

日刊工業新聞2022年2月10日

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