化学繊維メーカーが「スマート衣料」で攻勢!背景にコロナ禍で普及するリモートレッスン
導電素材で生体情報把握
化学繊維メーカーが導電素材を用いて心拍などの生体情報を把握する「スマート衣料」で攻勢をかけている。東洋紡はフィルム状導電素材「COCOMI(ココミ)」を用いてサイクリング向けアンダーシャツを制作、5―6月をめどに一般向けに発売する。帝人フロンティア(大阪市北区)はゴルフレッスン向けにセンシングウエアとアプリケーション(応用ソフト)を開発した。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、対面でのレッスンや体調確認が難しい点も後押ししており、需要の伸びが見込まれる。(江上佑美子)
東洋紡はサイクリスト向けに、市販のセンサーを装着して心拍を計測できるアンダーシャツを開発した。正確なデータを取るため、適度に身体に密着する一方、伸縮性がある素材を用いることで、着心地に配慮した。
サイクリング観光事業に力を入れる千葉県南房総市の観光協会と連携した認知度向上などを図り、広く需要が見込めると判断。エンドユーザーへのネット販売を決めた。1枚8000円程度、年間数千枚の販売を見込む。ココミは既にスポーツ時の体調管理のほか、競走馬の見守りなどに採用されている。
帝人フロンティアはウエアラブル(着用型)関連のセンサーやウエアを、「MATOUS(マトウス)」ブランドで展開している。ゴルフレッスン向けに提供する「マトウス ゴルフ」はセンサーと一体化したウエアを着用することで、スイング時の姿勢を計測、自動解析する。コロナ禍で対面指導が難しい中、リモート指導などを行うティーチングプロへのレンタルを始めた。野球やテニス向けにも拡大予定だ。
マトウスを用いた睡眠管理サービスも3月に開始した。睡眠時の呼吸数や寝返りの回数などを計測するセンサー「マトウス エスエス」を寝具の下に敷き、専用アプリで睡眠の質を判定する。重村幸弘帝人フロンティア取締役執行役員は「コロナ禍によるリモートワーク増加などで、睡眠のリズムや質に悩む人が増えている」と説明する。
熱中症での事故防止
東レはNTTと共同開発した「hitoe(ヒトエ)」のラインアップ拡充に取り組む。ヒトエは導電性高分子をナノファイバーニットの隙間に固着した機能性素材。無意識に体から発する電気信号を収集し、心拍数などを把握する。
リモートワークの普及や熱中症への関心の高まりで「特に作業者の見守りへの需要は増えている」と、機能製品事業部の勅使川原崇部長代理は語る。
工事などの作業やスポーツと比べ、体の動きが大きくない医療用途への拡販を念頭に、肌触りが柔らかい製品や、着脱しやすい製品を春以降出す予定だ。
熱中症などによる事故防止や、高齢者の体調管理の観点から、今後もスマート衣料の需要は高まると見られる。
機能に加え、デザイン性や着心地、価格を訴求する動きも進みそうだ。