東洋紡がPCR検査試薬の生産倍増へ、新型コロナ感染拡大で
東洋紡は2月に敦賀事業所(福井県敦賀市)におけるPCR検査用の診断薬・試薬の生産を倍増する。新型コロナウイルス感染拡大を受け、PCR検査の実施件数が増え検査試薬需要が拡大していることに対応する。同社は新型コロナ向けPCR試薬とその原料に関する事業で2021年3月期に売上高15億円以上を見込んでいる。供給を増やすことで、同事業の規模も2倍超に膨らむ可能性がある。
東洋紡の敦賀事業所では、新型コロナ感染拡大の影響で生産する一般試薬の需要は減少した。それにより余剰となった生産能力を新型コロナのPCR関連製品に振り向ける。具体的な生産量は明らかにしていない。
民間検査センターの参入により、PCR検査の需要が高まっている。東洋紡の楢原誠慈社長は「当社の試薬は精度が高く、かつ(検査結果がでるまでの時間が)早いと評価してもらっている。完成した製品が即出荷という状況が続いている」としている。
同社は全自動遺伝子解析装置「ジーンキューブ」や同装置向け診断薬、汎用遺伝子増幅装置向けの試薬などを手がける。同社のジーンキューブ用新型コロナ遺伝子検査試薬は、検査室への検体到着から最短35分でウイルスを検出できる。成田国際空港では、同社の機器と試薬が採用されている。東洋紡はライフサイエンス事業を強化しており、尿中有形成分分析装置や人工腎臓用中空糸膜、神経再生誘導チューブなどを手がける。一般試薬や医薬品製造受託の落ち込みを新型コロナのPCR関連製品が補い、同事業の21年3月期の売上高は前期比2・1%減の250億円を見込む。
日刊工業新聞2020年1月22日