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ウクライナ情勢に懸念..国内「社債発行」の延期が相次ぐ

国内の社債発行の延期が相次いでいる。年明け以降、米国の金融引き締め策の影響を受けて国内の債券市場では金利が上昇。さらにウクライナ情勢の緊迫化など地政学リスクの高まりも加わり、投資家のリスク許容度が低下、投資マインドを押し下げている。2021年度の社債発行額は当初見通しに達しない可能性が高い。

2月に入り、日本航空(JAL)やオリックス銀行、東京電力と中部電力が折半出資するJERAなどが社債発行を延期した。JALは年限10年のトランジションボンド(移行債)の発行を延期した。「投資家の目線が定まっていない中で意図する起債が困難」(同社)と判断し、今後市場を見定めて検討していく。オリックス銀行は普通社債とサステナビリティーボンド(環境債と社会貢献債)を総額200億円で発行予定だった。「昨今の金融情勢を踏まえて延期を決定した」(同)としており、今後の発行時期は未定だ。

JERAは、足元の金利上昇や市場環境の悪化、投資家の投資意欲の減退を発行延期の理由に挙げる。当初年限10年のトランジションボンドを250億円で発行予定だったが、4月以降に延期を発表。「トランジションボンドに需要がないわけではない。現在の状況を踏まえて年限と金額は検討中」(同)と説明する。1月は計画通り合計400億円で発行した。

SMBC日興証券の吉川毅クレジットアナリストは、相次ぐ社債の発行延期について「発行中止ではなく、延期なので短期的な影響にとどまる」との見方を示す。年初から米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締めで国債の利回りは上昇傾向にあり、企業の社債調達コストも上がっていたが、延期には至っていなかった。そこへウクライナ情勢による地政学リスクが高まり、投資家のリスク許容度が落ち込んだことが追い打ちをかけた。アイ・エヌ情報センターがまとめた「INDB発行市場レポート」によると、1月の普通社債発行額は、前年同月比2・0%減の1兆685億円だった。

今後の社債発行は減少傾向にあり、これまでの見通しよりも減額しそうだ。当初SMBC日興証券では、21年度は14兆円の発行を見込んでいたが「足元では約12兆6000億円と積み上がりは年明け以降減速気味で、未達になる可能性がある」と予測する。

日刊工業新聞2022年3月4日

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