日銀の買い入れ枠拡大で「社債発行急増」の大きな弊害
アイ・エヌ情報センターがまとめた「INDB発行市場レポート」によると、4―6月の普通社債発行額は前年同期比9・8%減の3兆4250億円だった。第1四半期として、2年連続で3兆円を超えた。新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、4―5月は低調だったものの、日銀による社債買い入れ枠の拡大を契機に、6月以降は発行額が急増した。
東京電力パワーグリッドが2800億円、JR西日本が1900億円、東北電力が1700億円を発行するなど大手企業による起債が目立った。上位5業種の発行総額全体に占める割合は63・6%で、5割を超えた。
6月以降の社債市場の動向について、SMBC日興証券の新堂尚紀デット・シンジケート部長は「日銀による社債買い入れの拡充でマーケットの雰囲気が変わった」という。日銀による21年3月までの事業債購入額は、5兆5000億円と巨額になることから、起債市場への好影響が期待されている。
一方で、「日銀の買い入れ増強により、その銘柄が日銀の買い入れ対象かどうかを重視するディーラーやファンドマネージャーが多く、発行体の業績評価や将来性分析がおろそかになりがちだ」(新堂デット・シンジケート部長)といった指摘も出ている。
6月単月の普通社債の発行額については、前年同月比2倍超の1兆8200億円だった。6月単月では発行額、銘柄数ともに過去最高となった。
日刊工業新聞2020年7月29日