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カーリットが量産化へ、EV狙う「色素」の正体

カーリットが量産化へ、EV狙う「色素」の正体

車内温度上昇の原因となる近赤外線を吸収する高耐熱色素

カーリットホールディングス(HD)は、自動車内の温度上昇の原因となる近赤外線を吸収する高耐熱性色素を開発する。2022年度中にサンプル提供を始める。耐熱性を従来の約200度Cから200度C超に高める。樹脂への練り込みが可能になり、近赤外線をカットする樹脂窓を簡単に加工できる。電気自動車(EV)のエアコン効率向上や軽量化に寄与する素材として提案し、将来売上高10億円超を目指す。

新開発の色素顔料は実験で230―250度Cの耐熱性を確認した。実験を継続して22年度にサンプル提供を開始し、24年までに量産化を目指す。熱線遮断コーティング用途で展開する既存の色素に対し、新開発品は200度C超への耐熱性向上により樹脂に練り込めるなど加工性が高まり、用途を拡大できる。適切な量を練り込むことで、樹脂の透明性を維持する。

期待する用途の一つが、自動車のポリカーボネート樹脂製窓だ。特にEVは軽量化ニーズが強く、電気の使用量を抑えるためエアコン効率を高めるニーズも強い。既存の近赤外線カットフィルターは無機材料を使い、近赤外線以外も反射して無線通信の電波に影響する懸念があるため、近赤外線を選択的に吸収する色素に商機があるとみる。自動車のほか建材などに提案する。

近赤外線を吸収する色素顔料を工業的に生産するのはカーリットHD傘下の日本カーリットだけ。ジイモニウム骨格を持つ色素で、今回、置換基や分子設計の改良により耐熱性を高めた。既存品は同色素は特殊な電子材料用途に使われている。環境意識の高まりを受け新用途を開拓する。

日刊工業新聞2022年3月3日

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