人事制度にジョブ型の概念取り入れた自動車部品メーカー、CHOの手応え
武蔵精密工業は2021年4月、ジョブ型の概念を取り入れた人事制度を導入した。経営環境は電動化を中心とした自動車業界の変革、人工知能(AI)や農業といった新規事業の育成強化などで大きく変わりつつある。旧来の等級のみをベースとした人事制度だけでは、求める人材の育成や確保が実現できないと判断し、新制度への移行に踏み切った。
武蔵精密の社員約1100人を対象に、開発・技術・経営企画系、事務企画系、現場監督、専門技能、製造技能の五つの「職群」を設定。各業務の重要業績評価指標(KPI)を明確にしながら、職群ごとに処遇を定める。既存の人事制度と融合した制度としており、緩やかなジョブ型への移行と位置付ける。
前田大執行役員最高人事責任者(CHO)は「評価の際に今まで以上にメリハリがつき、フィードバックもしやすい」と手応えを示す。優秀な人材獲得も新制度の大きな狙いだ。「技術系でマーケットに対してそれなりの競争力を出せるようになってきた」という。
ジョブ型の採用と同時に、求める人材像も明確にした。創業の精神や使命などをまとめた「ムサシフィロソフィー」にある、「お得意様本位」「誠実を尽くす」といった七つの行動指針をそれぞれ細分化して具体的な行動に落とし込み、コンピテンシー(行動特性)を明文化した。従来は部門任せのオン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)に基づいており定性的だったが、明文化したことで従業員からは「どうすべきかがよりクリアになった」との声が挙がる。
社内公募制度も正式導入しており、徐々に対象ポジションを増やしつつある。これらの新制度を定着させると同時に、今後はエンゲージメント(従業員と企業の関係性)評価でも、コンピテンシーの要素などを入れた新たな仕組みを整えたい考えだ。前田執行役員CHOは「これらの制度を回して会社の魅力や能力向上につなげたい」と話す。