ホンダ系サプライヤー、成功率は十数%と引き留められたドイツ企業の買収

武蔵精密工業・大塚社長に聞く「戦う相手は世界のメガサプライヤー」

 2016年に約450億円を投じ、独鍛造大手のハイ・グループを買収した武蔵精密工業。長らく主要取引先としてきたホンダ向けの売上高は従来の8割近くから約5割に薄まり、独フォルクスワーゲンなど欧州メーカー向けを中心に事業の多角化を進める。4月に創業80年の節目を控える中、18年内をめどとする武蔵精密とハイ・グループのブランド一本化も打ち出した。大塚浩史社長に今後の戦略を聞いた。

 ―ハイ・グループとのシナジー(相乗効果)創出の現状は。
 「順調だ。当時の買収の狙いは三つ。まず世界での販路拡大については、双方の既存販路を新規開拓に生かすことで従来比5割増程度で進んでいる。欧州事業の強化に関しても、当初数%だった欧州売上高比率が買収で33%程度に高まった。三つ目の技術融合については今後、ハイの高速鍛造技術に当社の精密加工技術をかけ合わせ、生産現場の競争力向上を進める」

 ―課題はありますか。
 「目標とするビジョンの共有や信頼関係の構築、具体的な取り組みに間違いはないが、スピードが足りない。統合を加速するため、まず18年中に両社のブランドを一本化する。これはハイ・グループから提案があった。社内での主語は『武蔵』や『ハイ』ではなく、『我々』になる。その後は組織も一本化し、意思決定の仕組みをシンプルにしていく」

 ―電動化やシェアリング(共有)の台頭といった車産業の変化にどう対応しますか。
 「イノベーションが業界構造を劇的に変化させた例は、カメラや家電など他産業では既にある。いわゆる『CASE』は自動車業界が初めて大きく変わるタイミング。将来、車はコモディティー化するかもしれないが、人やモノの移動にはギアや減速機などの機械的要素が必ず残る。電池やモーターなどと並び、減速機は今後も車のコアであり続ける」

 「戦う相手は世界のメガサプライヤーだ。彼らは全方位で変化に臨んでいる。当社はディファレンシャルギアなど競争力の高い製品や得意な地域、得意な顧客といった“局地戦”で一番を目指す」

 ―4月に創業80年を迎えます。
 「新分野に挑戦し、難局を突破してきた当社の“良きDNA”を残したい。当社は航空機部品で創業し、時代とともにミシン部品や2輪車部品に主力事業を転換してきた。先人は戦争や経済危機など変化が起きる度に新しい産業を見つけ、突破した。今の車業界は、『CASE』に代表される初の大変革期にある。世界のメジャープレーヤーと戦い、勝てるメーカーを目指す」
(聞き手=名古屋・杉本要)

日刊工業新聞2018年3月15日

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
03月17日
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大塚社長は創業者の孫。ハイ・グループの買収前、あるM&A関係者からは「欧州企業の買収の成功率は十数%」と引き留められたようだが、固い信念の下に大型買収を実行した。創業家出身社長を中心にして進む“ホンダ系”から“グローバルサプライヤー”への飛躍は今のところ視界良好だ。

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