安川電機子会社が挑む、AIでこれまで自動化できていない製造現場の自動化
ピッキング・外観検査向け 必要なデータ生成
安川電機の100%子会社であるエイアイキューブ(東京都中央区、久保田由美恵社長)は、製造現場への人工知能(AI)実装に取り組む。2020年9月からはロボットのピッキング作業に適用できるAIモデルを構築する「バラ積みピッキング用途」の提供を開始。21年9月には学習に必要な疑似画像を大量に作成し、画像検査を実現する「外観検査用途」も訴求する。AIでこれまで自動化できていない領域の自動化を進める。
工場自動化(FA)現場におけるAI活用を実現するのがエイアイキューブだが、久保田社長は「AIはデータがないと始まらない。他の手段があるならそちらの方が良い。AIはモノづくりの第1選択肢ではない」ときっぱり。さらに「顧客にとってはAIのような曖昧なモノよりも論理式・計算式など確かなモノの方が製造現場には向いている」と続ける。それでも現場には曖昧な作業があることは事実。この自動化をエイアイキューブは実現する。
同社のコアになる考え方が「アリオム」だ。日本のモノづくりは高精度・高品質のため不良品に関するデータが少ない。データがないとAIの精度は上がらない。「なければ作ってしまおうというのがアリオム」と久保田社長は解説する。
アリオムでは学習するためのAIだけでなく、データ生成の領域にAIを活用する。必要なデータをデジタル環境上で大量に生成。AIを活用して実物に近いリアルなデータに近づけ、同学習データからAIを作成する。
20年9月から開始した「バラ積みピッキング用途」は、ワークのつかみ方を学習するもの。定形物だけでなく不定形物や半透明な部材も把持可能だ。まず、バラ積みワークの画像データをシミュレーション上で自動的に大量生成。実データに近いデータにして、ワークを安定してつかめる位置を算出する。最短半日程度でピッキングのためのAIモデルを完成する。これにより、多品種少量生産や変種変量生産の段取り替えが容易になる。
21年9月からは外観検査向けの提供も始めた。疑似的に不良データを作成し、短期間で高精度な外観検査のためのAIモデルを完成する。安川電機のロボットラインで活用した場合、不良画像の見逃し率は0%を堅持しながら、良品を不良品と判断する虚報率を低減する。
エイアイキューブではアリオムの考え方を活用したAI開発技術の適用範囲拡大を狙う。目下、機械の波形データから異常を感知するソリューションの開発も進めている。(川口拓洋)