空室率上昇に歯止めの「都心オフィス」、それでも賃料は弱含み推移のワケ

  • 0
  • 2

2022年の東京都心のオフィス市場は、上昇基調にあった空室率に歯止めがかかりそうだ。新たに完工するビルが少なく、テレワークの広がりで床面積を減らす動きも一部企業にとどまる見通しのためだ。一方、賃料は、23年以降のオフィスの大量供給時期を見据え、今のうちに値下げして早くテナントをつかむ動きがあり、弱含みで推移しそうだ。(大城麻木乃)

森トラストによると、22年の東京23区における大規模オフィスビルの供給量は51万平方メートルと、21年(61万平方メートル)より少なく、過去20年で2番目に多かった20年(185万平方メートル)の3分の1以下にとどまる見込み。新規供給が限られる中、市場からは21年秋の緊急事態宣言の解除後から「オフィスの引き合いが活発になっている」(大東雄人JLLリサーチ事業部シニアディレクター)との声が聞かれる。

また、森ビルが宣言解除後の21年10月に実施した調査では、新規で賃借面積を「拡大予定」と答えた企業の割合が40%と「縮小予定」の35%を上回った。20年の調査では「縮小予定」が42%、「拡大予定」が33%だっただけに、「経済活動正常化への動きを背景に、企業心理に改善の兆しがみられる」(森ビル)。デジタル変革(DX)特需で潤うIT企業をはじめ、メーカーなど業績が好調な企業を中心にオフィス面積を増やす動きが出てきそうだ。富士通やLIXILのように、一部で本社の延べ床面積を大幅に減らす動きもあるものの、「まだ大部分の企業は本社の最適なあり方を検討中の段階」(JLLの大東氏)という。

米国を代表する「GAFA」といえども、今後のオフィスの位置付けは定まっていない。米グーグルが22年1月のオフィス再開の延期を決めたり、米アップルが同1月に予定していたオフィス再開を2月に延期したりといった状況で、各社とも在宅勤務をいつまで続ければいいのか考えあぐねている。日本の先進企業も米国企業の動きを参考にする向きが多い中にあって、まだはっきりと将来のオフィスのあり方を決めきれない企業が多いと言えそうだ。

21年秋の緊急事態宣言の解除後、東京都心の空室率には変化の兆しがある。都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)の同年11月の空室率は、三幸エステートの調査で16カ月ぶりに前月比で低下し4%割れの3・93%だった。三鬼商事の調査でも11月は21カ月ぶりに前月比で低下し、引き合いが活発になってきたことで上昇基調にあった空室率に頭打ちの動きがある。23年の大量供給時期を見据え、値を下げて早く空室を埋めるビルオーナーが増えており、22年も空室率はこのまま横ばいで推移しそうだ。

値下げの動きがあるため、賃料は三幸エステートの調査で21年11月まで3カ月連続で前月比下落。三鬼商事の調査では同月まで16カ月連続で下げ続けている。「22年も緩やかに下がり続ける」(JLLの大東氏)と予想され軟調に推移しそうだ。

日刊工業新聞2022年1月4日

関連する記事はこちら

特集