六本木ヒルズを“逃げ込める街”に!森ビルの「防災要員社宅」とは?

復旧作業の“最前線”

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ハード・ソフト両面で「逃げ込める街」を具現化する(東京都港区の六本木ヒルズ)

森ビルは本社を置く六本木ヒルズ(東京都港区)の2・5キロメートル圏内に、社員約140人が暮らす「防災要員社宅」を構える。大規模災害が起きた際に管理・運営する物件に駆けつけ、被害の確認や帰宅困難者の受け入れ、復旧作業などにあたる“最前線”だ。自家発電による電力供給や耐震性能といったハードだけでなく、ソフトでも「逃げ出す街から逃げ込める街へ」という信念が強く息づく。

東京23区で震度5強以上の地震が発生すると、森ビル本社は速やかに救護活動部やビル復旧部、そして防災要員を束ねる社宅部などで構成する「震災対策組織」に移行する。直近では2011年の東日本大震災で設置。当時、震災対策室で指揮を執った森ビルエステートサービスの佐野衆一常務は「就業時間外の夜間・休日を含め、いかに迅速な初動を取れるかがカギ」と説く。

それを支える取り組みの一つが、阪神・淡路大震災後の98年に制度化した防災要員だ。防災要員社宅には原則として新人が住み、さらに手を挙げた35歳以下の若手も近隣マンションに居住。それぞれアークヒルズや虎ノ門ヒルズなど担当物件を割り振られており、いざという時には現地に急行する仕組みだ。重要な役割を担う代わりに、高くなりがちな家賃の一部は会社が負担する。

森ビルの備えは、これだけではない。本社の10キロメートル圏内には、さらに約700人の社員が居住。毎日、宿直する社員も置いている。全社員を対象とした年2回の大規模訓練に加え、防災要員は年6回の訓練にも参加が必須だ。徒歩での出退社訓練もある。民間企業としては異例の構えだが「すべて“逃げ込める街”としての機能を確保するため」(佐野常務)と迷いはない。

全社員が大規模訓練に参加し、備えを万全にする

地域と信頼築く

背景にあるのは、市街地再開発事業が備える高い公共性だ。佐野常務は「自助・共助・公助の共助に携わるのは我々の使命。公だけでは難しい領域を補うのは当然だ」と言い切る。ただ、それを実際に具現化できる民間企業は少ない。コストの問題も立ちふさがる。「非上場企業であり、強い意志で物事を追求できる当社の優位性かもしれない」(同)と捉える。

そもそも社員が再開発地域に居を構え、時間をかけて信頼関係を築いていくのが“森ビル流”だ。代名詞であるアークヒルズの開発当初から祭りがあればみこしを担ぎ、災害が起きれば住民と復旧にあたってきた。佐野常務は「社員は『地域に密着し貢献する』という意識を持っている。それが連綿と受け継がれており、防災要員もその延長線上にある感覚だ」と明かす。

同時に、防災要員が安心・安全に作業を進めるための環境づくりも進める。省電力広域無線ネットワーク(LPWA)を使い、社員の動きを把握するシステムを1月に稼働。停電や一般通信回線の使用制限が生じた場合でも、防災要員は位置情報を送る端末をヘルメットに取り付けるだけで本社や家族に安否を知らせることが可能になった。逃げ込める街への転換は続く。(堀田創平)

日刊工業新聞2020年1月20日

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