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洋上風力のフェーズ変わるか、黎明期の市場が一気に“消耗戦”への事情

洋上風力のフェーズ変わるか、黎明期の市場が一気に“消耗戦”への事情

東電リニューアブルパワーは実証機を使って銚子沖で商用運転しているが…

2021年のクリスマスイブ、エネルギー業界に風力発電ショックが走った。経済産業省と国土交通省が再生可能エネルギー海域利用法の入札に基づく3地域の事業者を公表し三菱商事系がすべて落札したが、驚くべきは供給価格。入札の上限価格が1キロワット時当たり29円に設定されたのに対し、11・99―16・49円と半値からそれ以下での落札だ。2021年度の着床式洋上風力発電の固定価格買取制度(FIT)価格は32円。今後、一気に価格が下がるのか、業界は戦々恐々としている。(編集委員・板崎英士)

「これでフェーズが変わる」。週明け、今回入札したあるエネルギー企業のトップはこううなった。国内の洋上風力発電は黎明期にある。遠浅の海が少なく着床式に向かない地形だが、浮体式はまだ開発途上。このため国は再エネ海域利用法に基づき「秋田県能代市・三種町・男鹿市沖」、「秋田県由利本荘市沖(北側・南側)」、「千葉県銚子市沖」を促進地域に選定し着床式で初めて公募した。

ただ銚子沖では東電リニューアブルパワーが東京大学と共同で新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の実証実験を受託、さらにデンマーク国営のオーステッドと合弁企業を設立し19年から実証設備を使って商用運転を始めるなど先行的に取り組んでいる。それぞれの地域で実証から実装に向け、本命が着実に進めるのではという見方もあった。

結果は三菱商事エナジーソリューションズ、三菱商事、中部電力系のシーテックの連合に、由利本荘市沖にはウェンティ・ジャパンも加わり総取りとなった。入札は価格点と事業実現性に関する得点(技術点)が半々で評価。3地域とも価格点は三菱商事系が満点、技術点は能代市・三種町・男鹿市沖ではトップだったが、他の2地域では2番手だった。

同グループは米ゼネラル・エレクトリック(GE)の発電機を使うが、134基を導入するスケールメリットが得られる。またアマゾンやNTTアノードエナジー、キリンホールディングスなどの協力企業と組むことも表明している。「FITがなくなり再エネ価値は自由に設定できる。巨大な風車群で企業イメージをPRすることを含めた価格設定では」と電力会社の首脳はいう。

22年は秋田県八峰町・能代市沖での入札があり、10カ所以上の有望区域が設定される見込みだ。先のエネルギー企業のトップは「考えをリセットして入札する」という。総合商社が本気で参入し、一気に消耗戦になる可能性も出てきた。

日刊工業新聞2021年12月29日

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