新事業の研究開発に生かす、アイシンのAI活用法
アイシンがデジタル変革(DX)を推進するため、人工知能(AI)の活用を積極化している。自動車部品の外観検査などで業務改善につなげるほか、新規事業の研究開発などにも生かす。AIの知識を有する人材も拡充する考え。AIやDXを推進することで、次世代の成長につなげる事業体制を整える方針だ。
アイシンは生産の効率化に加え、開発設計、事務部門などのプロセス革新や、乗り合い送迎サービス「チョイソコ」、自動駐車といった新領域創出でもDX化を推進している。
AI活用の好事例の一つが、ドアフレームの外観検査だ。従来は主に作業者による目視検査だったため、不良品を見逃すリスクがあり得た。AIで自動化すれば、より品質を上げられる。さらにAIには人と同じ判断基準を持たせつつ、学習させていくことが重要とみる。
特徴はAIに三つの外観検査の判断をさせることだ。「見たことがあるOKデータ」「見たことがあるNGデータ」に加え、未学習の「見たことがないデータ」も判定する。その上で、AIの手がけた製品が増えるとともにAIの未学習度が上がると、ある一定のラインで学習させるなどして精度を高めていく。
同社でAIの取り組みを主導するDS部(データサイエンス部)の高橋克彰室長は「AIが本当はNGではないのにNGだと判断してしまうと、生産ロスが増えてしまう。それを減らしながら、AIを賢くしていく仕組みだ」と説明する。
一方、アイシンではAIの取り組みを広げるため人材育成にも余念がない。25年度までにアイシングループの国内の全事技職(総合職)約1万4000人を対象にAIの基礎知識を身に付けさせる方針だ。座学などの教育プログラムを用意し、AIの基礎知識などを備えた人材を「初級」とする。またAIを実際に業務改善などに活用できる人材を「中級」とし「AI人材」と位置付ける。AI人材は20年度の60人から25年度に1400人程度に増やす計画だ。DS部が指導役を担う。
AIによる効率化で生み出した経営資源は新領域の開発などに充て、AIを活用した新たな製品やサービスの開発をさらに加速させる。DS部の加藤浩明部長は「中長期的に各カンパニーで検討してもらっており、AIを使った具体的な事業検討はこれから。ただ現時点でも新規事業にDS部の人員をかける比率を上げていっている」と体制の強化を急ぐ。(名古屋・山岸渉)