人や社会に尽くす。ジャパネットたかた創業者・髙田明さんの経営哲学
「人は人によって生かされている。どれだけのことを他人や社会のために尽くしたかということが企業人としても、一人の人間としても大事だ」
髙田明AandLive社長は、ジャパネットたかた創業者として通販事業を推進。「伝わること」にこだわった情熱あふれるプレゼンテーションはテレビの視聴者を魅了し続けた。ジャパネットたかた社長を退任して6年。現在も地元テレビ番組への出演や講演依頼は途切れない。髙田氏が語る経営哲学は人生哲学として聞く者の心に響く。
「ミッション、パッション、アクションの三つを大事にしている。何のために生きているか、活動しているか。理念を伝えるには、情熱が必要。目標に近づくには行動を起こさないといけない」
うまくいかなくても「現実を受け入れて修正していけばいい。今の瞬間を一生懸命生きることが大切」という言葉には、強靱(きょうじん)さと同時にしなやかさが感じられる。
「驚かれるかもしれないが僕の人生は失敗がない。これはブレークスルー思考という発想法で、自分や企業に降りかかる難題を失敗と思わず試練と思って乗り越えていく」。何度倒れても起き上がる気持ちが必要とし、試練を乗り越えていくうちに目指すミッションに近づくと解説する。
コロナ禍による経済への影響など一人の力で変えられないことに悩みすぎたら心身ともに疲れ、活力も失われる。
「現状を受け入れて100%のうちの10%でも20%でも自分たちの力で変えられそうな可能性があれば、そこに集中して取り組むことが重要だ」
ジャパネットたかたはテレビの地デジへの完全移行後の2012年度、経常利益は10年度比約5割減に落ち込んだという。その際、髙田氏の責任の下、全社一丸で挽回に向けて取り組み、13年度は目標額を超えて過去最高益を達成した。「可能性の20%に注力した」と振り返る。
事業承継や人材育成の観点から「任せる」は重要なテーマ。任せるための教育には愛情ある厳しさが必要と説く。
「人は皆成長したいと願っている。自分に足りない点を指摘されたら人は喜ぶ。改善し成果が上がり、仕事が面白くなる。そういう人材が育つことで企業は強い体質をつくっていく」
自分の「メンター」と呼ぶ一人、世阿弥の言葉「真(まこと)の花」の通り、今後も「初心」を忘れずに鍛錬や精進を続ける。(九州中央・勝谷聡)
【略歴】たかた・あきら 71年(昭46)大阪経済大経済卒、同年阪村機械製作所入社。74年カメラのたかた入社、86年たかた設立、99年ジャパネットたかたに社名変更、15年社長を退任。同年AandLive設立。長崎県出身、73歳。