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曲がる「全固体電池」開発。ウエアラブル端末に提案へ

産総研が実現

産業技術総合研究所人間拡張研究センターの鈴木宗泰主任研究員は、折り曲げても使えるフレキシブル全固体電池を開発した。放電中に切っても発火せずに放電を続ける。18枚の積層電池を用いて蓄電容量440ミリアンペア時と液体系のリチウムイオン電池と同等の容量を確認した。今後、耐久性や性能を向上させ、ウエアラブル端末などへの電池に提案していく。

極薄のガラス繊維をセパレーターとし、セパレーターの両側に固体ポリマー電解質と電極集電体を重ねる構造を採用。正極材料とガラス繊維が直接触れると充放電を繰り返すうちに金属リチウムが析出してショートする。固体ポリマー電解質を薄く塗ることで、この課題を解決した。

セパレーターと固体ポリマー電解質の3層構造の厚さは40マイクロメートル(マイクロは100万分の1)。ガラス繊維は繊維強化プラスチック(FRP)用の市販品を用いた。製造技術が確立している利点がある。電極はリチウムイオン電池と同じものを利用しているため、エネルギー密度などは変わらない。

固体電解質を用いているため電池が破損しても液漏れせず、放電中にはさみで切っても放電し続けた。折り曲げても充放電できる。現在は十数回の充放電性能を確かめて新電池の動作原理を実証した段階で、材料を調整するなどして耐久性や性能を高めていく。

現段階でも市販の材料でフレキシブル全固体電池を構成できた。量産などを見据えると、製造技術が成熟している領域で実用化を進められる見通しだ。

日刊工業新聞2021年12月1日

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