産業用ロボット活況、高まる自動化ニーズで投資に勢い

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高い軌跡精度が特徴のファナックの産業用ロボット「M―800iA」

産業用ロボットの需要が好調だ。新型コロナウイルス感染症の収束は依然として見通せないが、1年前と違い、さまざまなユーザー産業で設備投資意欲が上向いている。自動化需要の高まりを受け、2021年度も良好な市場環境が継続する見通しだ。(取材=川口拓洋)

受注額、2四半期連続で最高

日本ロボット工業会によると2021年1―3月期の産業用ロボットの受注額(会員ベース)は、前年同期比43・2%増の2460億円だった。四半期としては20年10―12月期の2223億円に続き、2四半期連続で過去最高を更新した。

個社で同様の傾向を示すのはファナック。21年1―3月期のロボット部門の受注額は662億円となり、20年10―12月期実績を1億円上回って四半期ベースの最高記録を2四半期続けて塗り替えた。

以前の同社の最高記録は17年4―6月期の629億円だった。当時は国内外で工場の自動化が進展しており、特に中国市場がけん引した。自動車産業が堅調で、溶接以外に組み立て工程などでも産業用ロボットの導入が進んだ。スマートフォンや電子機器など電子機器製造受託サービス(EMS)企業向けの需要も大きく伸びた。

17年はこうした新規需要による「特需」の様相が強かったが、20年後半から21年前半にかけての状況は、米中貿易摩擦と新型コロナウイルス感染症によって抑えられていた需要の反動増とも言える。

半導体搬送向け堅調

ロボット工業会の21年1―3月期統計では仕向け地別の輸出額で中国向けがトップ。17年7―9月期の681億円を大きく上回り、過去最高となる840億円を記録した。単純比較だが足元の需要は、インパクトが大きかった17年を超える勢いを見せている。

産業用ロボットの用途は電子部品向けの搬送や組み立て用と、自動車の溶接・塗装用に大きく分けられる。ロボット工業会の統計では、電子部品実装用の21年1―3月期の輸出額は前年同期比58・9%増の729億円となり、5四半期連続でプラスとなった。溶接用の輸出も同40・9%増の218億円と大幅に伸びた。

自社製品のサーボモーターを組み立てる安川電機の産業用ロボット

安川電機の小笠原浩社長は4月に開いた21年2月期連結決算の会見で「自動車各社の設備投資が期末にかけて回復してきた」と説明。

電子部品関係も第5世代通信(5G)など技術の高度化や、全世界での半導体需要の増加を受けて「半導体搬送向けロボットが堅調」とした。

EV進展、新たな商機

産業用ロボットの需要動向にも関わる大きなトピックスの一つが自動車の電動化だ。エンジン車から電気自動車(EV)への移行が進み、「100年に一度」と言われる大変革期にさしかかっている。車の電動化と産業用ロボットの関係性について、ファナックの山口賢治社長は「EV用バッテリー関連のロボットの引き合いが多数ある」と語る。安川電機の小笠原社長もEV化の影響について「新しいラインができるなど設備投資につながる。どちらかというとプラスになる」との認識だ。

ロボット工業会の統計では輸出とは対照的に国内の低迷が続いている。21年1―3月期の国内出荷額は同4・6%減の503億円となり、6四半期連続でマイナスとなった。ただ、各社のトップは「日本では設備投資が抑制されてきたが、自動車や半導体、電子部品関連で回復傾向にある」(小笠原安川電機社長)、「国内もようやく回復してきた。これからさらに上昇するのでは」(山口ファナック社長)と期待を強める。

自動車の塗装工程で活躍する川重の産業用ロボット

国内では新型コロナ感染再拡大に伴い3度目の緊急事態宣言が発出された。依然として新型コロナの影響は続いているが、国内のモノづくり現場でも潜在的な自動化ニーズが動きだしているのは確かなようだ。

ファナック、安川電機に並ぶ産業用ロボットメーカー大手の川崎重工業の21年3月期決算発表は5月11日に予定されている。川重のロボット事業もコロナ禍からのV字回復を目指している。同社は自動車や半導体、一般産機向けロボットに加え、医療向けを開拓。小型産業用ロボットによるPCR検査システムや手術支援ロボットへの参入・拡販を通じ、ロボット事業全体の成長につなげる方針だ。

20年度は新型コロナの影響で経済・産業全体が停滞したが、産業用ロボットを手がける各社は底力を見せ、業績は好調に推移した。21年度は自動車や半導体などをはじめとした製造業の着実な復活に伴い、自動化需要の一層の拡大が期待できそうだ。

日刊工業新聞2021年5月3日

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