世界初の技術群で構成、日産「次世代生産システム」の全容

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ロボットでシーリングの仕上げ作業の自動化を実現した

日産自動車が産業用ロボットの導入を加速している。技能の習熟が必要なシーリング塗布などの作業を数値化し、ロボットへの熟練技術の伝承を実現した。またエンジンやモーターなどの基幹部品をロボットで一括して搭載するシステムを開発。同じ生産ラインで電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HV)、エンジンのみで駆動する車をつくり分けることができる。地域ごとに異なる車の電動化ニーズに柔軟に対応する。(西沢亮)

日産は世界初の技術群で構成する次世代生産システム「ニッサン・インテリジェント・ファクトリー」を開発し、高級車を生産する栃木工場(栃木県上三川町)に2020年導入した。

技能の習熟が必要なシーリング塗布作業

主要技術の一つが、車体パネルの接合箇所の水漏れを防止するシーリング塗布作業の自動化だ。ハケやヘラを使う熟練技能者の手の角度や力加減などを計測して数値化し、「ロボットに転写して匠の動きを忠実に再現した」(坂本秀行副社長)。これまでシーリング作業は施工する部位の形状が複雑なため自動化が難しかった。

車の屋根の部分にあたる内装材「ルーフライニング」の組み付けも自動化した。ルーフライニングはクリップで車体に固定する。クリップを差し込む車体側の穴の位置を計測し、あらかじめ計測したルーフライニング側の穴の位置と合うようにロボットで内装材を移動。クリップを差し込む際の振動波形を解析し、しっかりはまったかを判定する仕組みも構築した。ロボットはルーフライニングのような柔らかい部品の扱いが苦手だったが、独自技術を組み合わせて自動化を実現した。

もう一つの主要技術が「パワートレーン(駆動装置)一括搭載システム」。作業者がエンジンなどの各部品を専用のパレットにセットするだけで、ロボットが車体の下から部品群を一括して組み付ける。EV、HV、エンジン搭載車の駆動装置に応じて、モーター、エンジン、電池などの部品の27通りの組み合わせに対応する。画像認識技術で車体の形状を瞬時に計測。0・05ミリメートルの精度で、自動運転に欠かせないセンサー類の正確な組み付けにも対応する。ルーフライニングの組み付けと同様に、負荷の高い車体下からの締結作業も自動化した。

電動化や自動運転技術の進展で車の機能が複雑化し、生産の難易度が高まっている。一方、日本やアジアでは少子高齢化で労働人口の減少が見込まれる。坂本副社長はカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の実現に向け、電動車を効率的に生産していくためには「従来の労働集約型のクルマづくりではとても対応できない」と指摘する。

日産は次世代生産システムで、脱炭素や人手不足などの課題に対応し、30年代の早期に日米欧中の主要市場に投入する新型車をすべてEVやHVに切り替える電動車戦略の実現を目指す。栃木工場を皮切りに同システムを国内外の主力工場に順次展開し、次世代車を巡る競争に打ち勝つ。

日刊工業新聞2021年9月30日

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