倒産件数は激減も、年明け以降に増加が懸念される理由
帝国データバンク(TDB)と東京商工リサーチ(TSR)が発表した10月の倒産件数は、TDBが前年同月比20・9%減の512件、TSRが同15・9%減の525件だった。ともに5カ月連続減少。10月として、TDBは1989年以来、TSRは64年以来の低水準。政府や金融機関の資金繰り支援策が倒産を抑える状況が続く。
TDBは不動産を除く6業種、TSRは不動産と運輸を除く8産業が前年同月を下回った。内訳では、製造業はTDBが同15・9%減の53件、TSRが同16・9%減の54件。
個人消費関連は大きく減少。飲食はTDBが同28・8%減の47件、TSRが同22・7%減の58件。宿泊はTDBが同66・7%減の5件、TSRが同38・5%減の8件だった。緊急事態宣言解除による人出増加が寄与したとみられる。
負債総額はTDBが同44・5%増の967億円、TSRが同25・7%増の984億円。ともに3カ月連続で増加した。負債約112億円の大型倒産があった。
TSRは6―8月は減少率が30%台だったのが、9、10月は10%台に縮小し、底打ち感が出たとする。今後は「融資の返済原資を確保できない企業が出てくる」と見込む。
TDBは通年の倒産件数について、55年ぶりの6000件割れの可能性が出てきたと指摘する。一方で、営業再開後に売り上げが回復せずに倒産するケースが出るとみて「年明け以降には増加に転じる」と見通す。
日刊工業新聞2021年11月10日