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電子レンジ用包装袋メーカーの倒産劇、加熱対応に注力も市場は「過熱」せず

いしだ屋、売り上げ鈍く融通手形の悪循環
電子レンジ用包装袋メーカーの倒産劇、加熱対応に注力も市場は「過熱」せず

写真はイメージ

電子レンジ加熱用包装袋などを販売していた「いしだ屋」は、東京地裁より破産手続き開始決定を受けた。同社は、代表の石川慎司氏が電子レンジに対応した包材の成長性に着目し、2009年7月に設立された。各種包装資材事業のほか食品事業や衛生事業、さらにはグループ会社を通じて飲食店事業にも参入するなど業容を拡大。2015年6月期に約4億3300万円であった売り上げは、20年6月期には約12億9500万円にまで伸長していた。

好調に見えた同社であったが、破産申立書に「過去の税務申告書の内容は実態と齟齬(そご)がある」と記載されていた通り、実態は大きく異なっていたようだ。20年6月期末時点では貸借対照表では、純資産合計が約6200万円と資産超過となっていたが、実態に合わせ修正した21年6月期末時点では、純資産がマイナスの約13億円と大幅な債務超過に修正されている。

自社で電子レンジ対応袋の製造に対応すべく、工場の新設など設備投資を実施してきたが、金融機関からの借入金が21年6月期末時点で約9億5000万円まで拡大。投資に見合うだけの売り上げを得ることできず、実際には赤字が続いていたようだ。

17年ごろ、資金繰りに窮した同社は取引先で関係が深かったA社に資金援助を要請し、融通手形取引を行ってきたとみられている。しかしその後は、コロナ禍で想定通りの売り上げが得られず、さらに悪化する資金繰りを新型コロナウイルス感染症の緊急融資で凌ぐが限界となり、自己破産申請を余儀なくされた。

今回の倒産要因は、設備投資に見合う売り上げを上げることができず、資金繰り改善策として融通手形取引に手を染めてしまったことだろう。融通手形のような付け焼き刃は資金繰り改善の根本的な解決にはならず、過去の事例でも最終的には経営破綻へと至っており、同社も同様の道を歩んでしまった。

(文=帝国データバンク情報部)
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日刊工業新聞2021年10月21日

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