GAFAに対抗、東工大とデンソーITラボが推進する共同研究講座の異“才”

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企業と学内の教員が連携して多面的に議論を行い、共同研究を進めていく(東工大提供)

東京工業大学情報理工学院とデンソー子会社のデンソーアイティーラボラトリ(東京都渋谷区)がユニークな共同研究講座に取り組んでいる。同社が派遣した2人の特任准教授は研究室主宰者となり講義に加え、学位取得の研究指導や教授会にも出席する。独立独歩の色合いが強いはずの同大の教員7人とともに「モビリティーへの人工知能(AI)応用」をテーマに多面的な研究を進めている。 (編集委員・山本佳世子)

産学共同研究を始める際に企業から派遣された教員は研究テーマや活動場所が限定され、学生の学位に関わる研究指導ができないことが多い。学位授与は大学だけの役割で責任も大きいためだ。しかしデンソーアイティーラボラトリが派遣した特任准教授2人は修士・博士研究の指導のほか、教授会への出席、国の科学研究費助成事業への応募など、かなりの自由度と責任が与えられている。

これを新制度ではなく、既存の枠組みで実現できている点が大きい。背景には大学の研究マネジメントを手がけるリサーチアドミニストレーター(URA)や事務局側の工夫のほか、AI研究を取り巻く問題があった。

技術の基礎と応用が近く「GAFA」を代表する巨大IT企業などとの競争が激しさを増す中、産学の伝統的な分業制では研究がうまくいかない。そのため現場重視の産学連携としつつ、自由度を持って学内を動き回れるスタイルとしたのだ。

東工大の篠田浩一教授は「大学、特に情報理工系は教員のグループ化がなじまない。しかしGAFAに対抗し、我々の基盤技術をデンソーアイティーラボラトリの次世代モビリティーと掛け合わすことで気持ちがまとまった」と振り返る。

コンピュータービジョンを核に機械学習や高性能計算、3Dデータ認識、最適化理論などの教員7人が集まった。研究の補助的活動をする大学院生のリサーチアシスタントも、共同研究から刺激を受けられる。

一方で、同社派遣の川上玲特任准教授は「文部科学省や経済産業省のプロジェクト経験もあるが、今回の仕組みは議論の途中で別の研究者が参加するなどの変更が容易だ」とメリットを強調する。「実験に必要なプログラムコードを別の研究室から提供してもらい、時間短縮できた例もあった」という。

当初、共同研究講座は2020年度から3年間の予定だった。だが、すでに共著論文が数件出ていることから、同社は派遣教員の研究力向上を実感し、期間を5年間に延長した。今後は長期の博士学生指導や共著論文など、さらなる成果が期待されそうだ。

日刊工業新聞2021年10月21日

COMMENT

山本佳世子
編集局科学技術部
論説委員兼編集委員

大学のキマリ(できること、できないこと)は一筋縄でいかない。明文化された規制がなくても慣習的に認められなかったり、そうかと思えば現場の訴えと工夫で実現したりとさまざまだ。今回の企業派遣の特任教員の活動が、かなりの幅を獲得しているのも、現場の産学の熱意あってこそに違いない。

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派遣教員

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