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高専の起業支援で50億円規模の新ファンド、東工大関連ベンチャーキャピタルの“ならでは”

東京工業大学関連のベンチャーキャピタル(VC)、みらい創造機構(東京都渋谷区、岡田祐之社長)は、最終で50億円規模となる2号ファンドを設立した。東工大へ編入する学生が多い高等専門学校の技術や人材育成を支援することで、他大学のVCにはない強みを出す。2号ファンドの設立は、ファンド規模33億円強の1号による26社のベンチャーへの投資で、4社が上場・株式譲渡した実績を踏まえて判断した。

2号ファンドは芙蓉総合リース、みずほ証券、ロームなどが出資した。期間は10年間。東工大関連のエンジニアと高専の技術・人材の育成、起業支援に力を入れる計画だ。全国にある高専は地域の課題解決や自治体との連携に取り組んでおり、大学と異なる教育や産学連携などの活動もあるだけに、ファンドを通じた支援に注目が集まりそうだ。

また、みらい創造機構は東工大、芙蓉総合リースとの連携で試作品製作を資金面で支援する「GAPファンド」を運営し、ここでの助成案件へ投資した例がある。学生向け起業メンター制度や、出資先のベンチャーと大企業や自治体を結びつけた実績もあり、今回のファンド設立で支援対象を高専に広げることで技術・人材面での相乗効果も期待できる。

みらい創造機構は2014年に東工大卒業生を中心に設立。東工大と高専の関わりに着目し、20年には高専向けキャリア教育の高専キャリア教育研究所(東京都渋谷区)を子会社化した。これまで東工大や高専の学生向けに若手起業家や研究者の講演会を開き、キャリア選択を考える機会を提供している。

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日刊工業新聞2021年9月14日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
大学発VBに対し、開拓が遅れていた高専発VBに目を付けたのは、まさに東工大関連のみらい創造機構ならでは、と感じた。他大学のVCは手を出そうにも、地域が同じごく一部の高専にしかアプローチできないだろう。同社のEXITは、中古住宅の売買プラットフォームの「ツクルバ」が2019年、資格・社員教育の「KIYOラーニング」が2020年、量子ドットレーザなど半導体レーザ技術の「QDレーザ」が2021年にそれぞれ上場。機械学習機能を内蔵した共存型データ解析プラットフォームの「アイズファクトリー」は2019年に株式譲渡だ。これらの事例を目にして、高専生は通常の大学生より年齢層が低いだけに、「将来は自分も創業者大富豪かも!?」と舞い上がり、若いだけにより思いもよらぬコトを成し遂げてくれるかもしれない。

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