匠の技術を生かして省人化、大成建設のロボットとの向き合い方

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柱に取り付けた溶接ロボット「T―iROBO Welding」

大成建設は、建設用の柱溶接ロボットを全国の作業所に順次導入する。ロボット活用は完全自動化や無人化を目指すものではなく、匠(たくみ)の技術を生かしながら省力化や省人化を図るのが狙い。軽量化や汎用性、使いやすさにこだわり、人材育成で下請けの協力会社を支援し普及拡大を目指す。建設業は少子高齢化などで担い手不足が深刻化。IT技術を駆使したロボットの活用で生産性向上にもつなげる。(編集委員・山下哲二)

大成建設が初めてロボットで全国展開するのは、2016年8月に開発した柱溶接ロボット「T―iROBO Welding(ティーアイロボ ウェルディング)」。6・5キログラムと軽量で持ち運びやすい設計。柱形状の制約をなくすなど、作業効率向上のため改良を重ねてきた。

その使い方は簡単。柱にロボットを取り付け後に配線作業を行う。続けてロボットに、溶接する場所の形状を記憶させるティーチングを実施して準備はほぼ完了する。施工は、柱を挟み対向した形で設置した2機の溶接ロボットが、仮固定治具を回避しながら先行溶接を行う。その後、治具を撤去し残りを溶接する。

操作はスマートフォン感覚のリモコンで行う。ロボットによる検査不良率は約1%と熟練工並みで、作業量は人の作業と同等レベルという。

柱を挟む形で設置された2機が、仮固定治具を回避しながら先行溶接を行う

難しい箇所は熟練工の溶接になるが、比較的簡単な溶接はロボットが担当する。高い位置や狭い場所で昼夜作業が可能。作業員は身体が楽になり、慣れるとロボットをセットした後、ほかの作業ができると好評だ。開発に当たった梅津匡一生産技術推進部課長は、「ロボットの性能を上げることも大切だが、現場で役立ち定着することに注力している」と説明する。

建設業界ではバブル時代、人手不足対策として巨額投資でロボット開発を進めた。しかし大型化や高コストで維持管理の負担も重く実用化に結び付かなかった。バブル期以降しばらく開発が停滞していた。

大成建設のロボットの開発責任者の阿波英俊生産技術推進部長は、「基本的には人がいなくてはいけない。開発しても使えないものは必要ない」と言い切る。開発はコストを抑えながら、軽量化や汎用化を意識したものに変わった。蓄積してきた技術と、情報通信技術(ICT)、人工知能(AI)などIT技術を駆使しながら改善を図っていく。

普及に向け同社では操作するオペレーターの育成にも注力する。20年に第三者の立ち会い試験を含む「ロボット溶接オペレーター資格制度」を導入した。

建設現場の溶接作業は、作業員の技量で品質が左右される。溶接技術の習得は、通常半年から2年程度を要するが、1週間程度で身に付く独自のカリキュラムを開発した。溶接作業の未経験者でもプログラムに参加することで、ベテランと同等の能力が身に付き、品質も確保できる。

日刊工業新聞2021年5月4日

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ロボット 大成建設

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