ニュースイッチ

世界でも希。Jパワーが生き残りかける画期的技術「CO2ハイドレート」実用なるか

世界でも希。Jパワーが生き残りかける画期的技術「CO2ハイドレート」実用なるか

直径25mm、高さ1mの室内実験装置で、CO2ハイドレートの生成に取り組む

Jパワーは石炭などの化石燃料で発電する際に発生する二酸化炭素(CO2)を、大気中に排出せず地中に貯留するCCS(CO2の回収・貯留)で、世界でも希なCO2ハイドレートに取り組んでいる。貯留に適した海底地盤を大きく広げる可能性のあるものだ。2021年初から茅ケ崎研究所(神奈川県茅ケ崎市)で、海水を用いた室内実証実験を開始した。22年までに概念として成立するかを研究し、実用化の可能性を探る。(編集委員・板崎英士)

CO2ハイドレートは海底でCO2を固体化させて板状にし、それを遮蔽(しゃへい)層としてその下にCO2を貯留する方法。CO2の地中貯留で利用が進むのは、天然の遮蔽層(キャップロック)が存在するその下を貯留層として利用する帯水層貯留。ただ貯留できる絶対量がどのくらいあるかは不確実だ。

日本の沿岸域での可能性は、地球環境産業技術研究機構(RITE)の調査で約1460億トンとされているが、3次元探査データで絞り込んでいくと大幅に下がるというデータもあり不透明な部分が多い。このためJパワーは地盤条件に影響を受けにくい第2の選択肢として、一定の温度、圧力の条件下で自然に生成するCO2ハイドレートを遮蔽層とする研究に取り組んでいる。

CO2ハイドレートは約6個の水分子がCO2分子を取り囲んだ構造で、海水密度より大きいため海中から浮かび上がらない。条件がそろうとCO2は膜状になり、それが固体に成長するという。「沖縄海域で自然に固体化したCO2ハイドレートが見つかっている」(茅ケ崎研究所の池川洋二郎上席研究員)。淡水と海水での成長の差や、海水温と地盤温度、圧力などハイドレートが安定して存在する条件を見つけ出すことがカギとなる。「室内実験では様々な条件を変え一度、成功した。実験で物理特性が分かれば、数値シミュレーションで再現できるのでは」(同)としている。

海外でもCO2ハイドレートの実証段階の例はほとんどない。国内では大学などで研究されているが「民間企業ではおそらくないのでは」(同)と言う。CCSは石炭などの化石燃料を生かしてカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)を達成するには必須の技術。石炭火力を主力電源とする自社の生き残りをかけて画期的な技術の実用化に挑戦する。

日刊工業新聞2021年9月21日

編集部のおすすめ