水素で存在感放つENEOS、「CO2」フリー戦略の道筋

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石油元売りは今後、製油所をどう活用するかが課題となる(ENEOS和歌山製油所)

ENEOSの二酸化炭素(CO2)フリー水素戦略が鮮明になってきた。26日に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業の第1弾として「大規模水素サプライチェーンの構築プロジェクト」の委託先が公表されたが、8テーマのうち4テーマに同社が選ばれ存在感を高めている。

4テーマのうち「液化水素サプライチェーンの大規模実証」は、日本水素エネルギー(川崎重工業100%子会社)、岩谷産業と共同で行う。海外で年間数万トンのCO2フリー水素を製造し液化水素として海上輸送。コンビナートに受け入れ基地をつくりパイプラインで供給する一貫供給網構築を実証するものだ。

残りの3テーマはENEOS単独で、うち二つが水素キャリアとして同社が注力するメチルシクロヘキサン(MCH)に関するもの。「直接MCH電解合成技術開発」は、水電解で水素を製造しトルエンと合成させる従来の2段階プロセスに対し、トルエン電解で水素ガスを経由せず1段階でMCHを合成するもので、商用を目指した大型プラントの実証を行う。1工程削減できることで、課題であるMCHの製造コストの大幅削減を狙う。

「MCHサプライチェーンの大規模実証」は、現在進行中のマレーシアや豪州企業とのMCH供給網の商用に向けた実証。水素供給網と比べ受入後にMCHから水素を取り出し、残ったトルエンを再び水素キャリアにリサイクルする工程が加わる。これらに加え「水素発電技術(専燃)実機実証」では水素発電の可能性を検証する。同テーマで火力発電大手のJERAや関西電力が水素混焼を中心に実証する中、ENEOSは大型ガスタービンによる水素専焼に取り組む。

今後、石油需要の激減が予想されることから、石油元売り各社にとっては製油所や製造所の活用が経営上の大きな課題だ。液体水素やMHCは貯蔵設備や精製設備などがわずかな改造で流用できるメリットがあり、その点でも優位性がある。

「今後、あらゆる産業でCO2フリー水素が必要になる。技術とコストをクリアし国際的な供給網をつくらないと、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)は実現できない」(杉森務ENEOSホールディングス会長)と、水素利用やその先の合成燃料の実用化に向け戦略投資を強化している。

日刊工業新聞2021年8月30日

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