トヨタが取引先のアルミ溶湯製造会社、高純度アルミのリサイクル技術構築に挑む
豊栄商会(愛知県豊田市、樹神康之社長)は東北大学と連携し、アルミニウムスクラップを自動車などに使われる高純度アルミにリサイクルする技術の開発に乗り出した。2025年度にも技術の確立を目指す。ただ同技術を火力発電比率の高い日本で普及させるには、リサイクル工程で二酸化炭素(CO2)を多く排出してしまう点が課題となる。解決に向け豊栄商会は、再生可能エネルギー事業者などとの連携を探っていく。(名古屋・山岸渉)
同社はトヨタ自動車を主な取引先とし、鋳造用アルミ溶湯を手がける。今回のリサイクル技術は、アルミスクラップに含有する余分な合金を除去し、純度の高いアルミに再生する。東北大が基礎技術を確立したアルミスクラップを電解・精製する手法などを用いる。
例えば、自動車の軽量化などで需要が伸びているアルミを加工した展伸材のスクラップを品質を下げずにリサイクルできる。現状はスクラップ工程で他の合金が混ざるなど品質を保つのが難しい。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受け、25年度をめどに技術を確立し、28―29年度に事業を開始する計画だ。
一般的にアルミの生産では、鉱石のボーキサイトから展伸材の素材となるアルミ新地金を製錬する。この際に多くの電力を消費する。この手法と比べ今回の技術は、電力使用量が約3分の1ですむ。
現在、日本ではアルミ新地金は中国などからの輸入依存度が高い。豊栄商会と東北大は同技術を確立し、国内でアルミリサイクルの仕組みを構築したい考え。
課題の一つはCO2排出量だ。樹神社長は「日本は火力発電がベースでCO2を多く排出してしまう」と指摘する。中国が原子力発電比率を高めていけば、同国でアルミ新地金を製錬した方が、日本でリサイクルするよりCO2排出量が少ないといった事態も想定される。
カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の動きが産業界で活発化する中、同技術を国内で普及させるにはCO2排出量を削減できるかが重要になる。樹神社長は「同技術を周知させてさまざまなパートナーと協業したい。国の支援も探っていきたい」と話し、再生エネ事業者などとの連携に活路を見いだす。