電子部品の値上げ顕在化、需要急回復で納期2倍に

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抵抗器はスマホやパソコンなど幅広い製品に使われる(KOA提供)

需給逼迫(ひっぱく)と価格上昇―。DRAM旧世代品などの半導体で見られてきた現象が電子部品にも広がってきた。抵抗器やコネクター、センサーなどで納期がこれまでの約2倍に延び、海外品から国産品へと値上げの動きが波及しつつある。(山田邦和)

「今の状態では1回当たり最大1リール(5000個)までしか注文を受け付けられない」。都内のある電子部品商社の社長は9月上旬、国内の抵抗器メーカーのうちの1社から、代理店を通じてこう言い渡された。

電子部品の販売形態には、特定の顧客向けにメーカーが生産し、商社を通じて販売するルートと、商社がメーカーから汎用品を仕入れて在庫し、不特定多数の顧客に販売するルートがある。「供給制限」がかかったのは後者、メーカーからは顧客の顔が見えにくいルートの方だ。通告を受けた電子部品商社の社長は「これまでは1回当たり10万個や20万個という単位で発注できていた。100万個という発注も普通にしていたのだが」と嘆く。

背景にあるのが需給の逼迫だ。水道の蛇口のように電気の流れを絞って電流や電圧を調整し、電子回路が適正に動くのを助ける抵抗器は、スマートフォン(スマホ)やパソコン、家電、自動車など幅広い製品に使われる。他の多くの電子部品と同様、2020年前半は新型コロナウイルス感染拡大の影響で需要が減少したが、その後急回復。経済産業省の統計では21年6月の国内生産は約157億個と、前年同月より約50%増加。コロナ前の18年6月(約145億個)の水準より高い。メーカーにとっては想定を上回る受注が一気に舞い込む状態が続く。

巣ごもり消費の拡大やテレワークの普及を受けた実需の回復に加え、「思惑買い」の要素を指摘する声もある。半導体不足が深刻化する中、「半導体が入手できたらすぐ生産に入れるようにと、電子部品の在庫を積み増す動きが顧客の間で広がっている。1年分をまとめて発注したり、二重発注する動きも含まれていないかと懸念している」(電子部品商社担当者)。

この“瞬間風速的な需要増”に、生産側が対応できなくなり始めている。もともと抵抗器は「一気通貫の垂直統合モデルで生産しているメーカーが多く、外部委託の比率は極めて低い」(同)。減価償却が終わった装置で生産して利益を上げるビジネスモデルを採用しているメーカーもあり、需要の変動を吸収できる余地が少ないとされる。

半導体は一般的に材料を投入してから完成するまで通常3カ月ほどかかると言われるが、抵抗器は2―3週間。このため需給逼迫が表面化する時期がDRAMの旧世代品をはじめとする半導体よりも遅れたが、足元では納期が延び始めている。抵抗器の国内メーカー、KOAは「納期が2カ月程度に延びた製品もある」と話す。

需給逼迫の影響は価格にも波及している。最初に値上げを打ち出したのは海外のメーカーだ。都内にある電子部品輸入商社の社長のもとには21年4月以降、価格を一律で平均10―15%引き上げるとの海外メーカーの連絡が相次いだ。交渉の上、メーカーによっては約10年ぶりに値上げを受け入れたという。

抵抗器だけではない。電力や電気信号の流れをつなぐコネクターや、外的信号を感知して電気信号に変換するセンサーも同様に10―15%の一律値上げを海外企業が打ち出し、足元で浸透しつつある。発売後、緩やかに価格が下落していくことが多い電子部品では異例の動きだ。「これまでは値上げの要請を断ってきたが、納期が3―4カ月に倍増し、入荷もままならない中で、今回は受け入れざるを得なかった」と同社長は話す。

コネクターでも需給逼迫の影響が懸念される(ヒロセ電機提供)

原料高騰、コスト上昇

「20年比で銅合金32%、銀メッキ15%、スズメッキ7%、ナイロン38%の値上がり」。ある海外メーカーが「原材料に起因するコストが上昇している」として電子部品輸入商社の社長に示した値上げの根拠だ。銅相場の指標となるロンドン金属取引所(LME)の3カ月先物は5月に1トン当たり1万700ドル台と、約10年ぶりに最高値を更新し、20年春に付けた直近の底値から2倍以上となった。脱炭素化の流れを背景に、電気自動車や太陽光発電に使われる銅は需要が急拡大し、「新しい石油」になる―。そんな思惑が価格に反映されている。

本来の石油からつくるナイロンなども価格が上昇している。石油・化学プラントが集積する米南部で2月、大寒波による停電が発生し、プラントの稼働が停止した影響が今も尾を引いているためで、「23年まで続くだろう」(電子部品商社担当者)との見方もある。ナイロンはコネクターなどに使う樹脂の原料だ。

抵抗器の抵抗被膜に使う貴金属のルテニウムやパラジウム、センサーが用いるガラスなどの価格も21年以降、値上がりしている。「素材インフレ」が電子部品に到達し、需給逼迫を背景に価格に転嫁される構図が浮かぶ。

日本の抵抗器やコネクター、センサーメーカーで一律値上げの動きは広がっていない。ただ原料価格の上昇がコストを押し上げる状況は海外と同様で、発表はしていないものの、KOAやコネクターメーカーのヒロセ電機、複数のセンサーメーカーなどが顧客ごとに個別の価格交渉を始めているもようだ。需給の逼迫がすぐに解消する見通しが立たない中、電子部品市況の上昇基調は続きそうだ。

日刊工業新聞2021年9月21日

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