大手電子部品メーカーの設備投資は1兆円超え、攻めるのはMLCCか全固体電池か
第5世代通信(5G)や電気自動車(EV)の普及などを追い風に電子部品メーカーが2022年3月期の設備投資を増やしている。大手8社の同設備投資額は合計で1兆円を超え、前期に比べ約3割増える。新型コロナ感染の再拡大や半導体不足、客先での在庫の積み上がりなど懸念材料はあるが、中長期で市場は拡大するとの見方が支配的。積極投資で市場の成長を取り込み業績拡大につなげる。
京セラの22年3月期の設備投資額は前期比約45%増の1700億円。2期連続で過去最高を更新する。谷本秀夫社長は「旺盛な需要が見込まれる5G関連部品の生産能力を前期比10%以上増やす」と説明。世界シェア首位のセラミックパッケージを生産する鹿児島川内工場(鹿児島県)、有機パッケージを手がける京都綾部工場(京都府)などに投資する。
TDKは22年3月期の投資額3000億円のうち約6割を「(スマートフォン向けより高容量な蓄電池である)パワーセルの技術革新や開発投資に振り向ける」(石黒成直社長)。家庭向け蓄電池システムや電動バイク向けの生産を増やす。同社のパワーセルは「鉛電池や円筒形リチウムイオン電池に比べバイクの加速感を得やすく、中国のハイエンドな電動バイクで採用が広がっている」(業界関係者)。
積層セラミックコンデンサー(MLCC)世界首位の村田製作所は前期より投資額が減るが「前期は土地の確保なども含めた数字。製造ラインに限れば今期は前期と同程度か若干増える」(中島規巨社長)。全固体電池は量産ラインを野洲事業所(滋賀県)に設置し、ウエアラブル端末向けに供給する。パワー系の円筒形電池も「旺盛な受注と注残があり、一定の投資が必要と考えている」(同)という。
太陽誘電は22年3月期にMLCCの生産能力を前期比で10―15%伸ばす。MLCCの原料であるチタン酸ガリウムの能力も拡大する計画だ。
各社とも半導体不足などによる生産調整の可能性を織り込むが、短期にとどまり、その後は自動車やスマホ1台当たりの電子部品搭載数の増加などを背景に拡大基調に戻ると予測する。
ただし海外勢との競争は続く。例えばスマホ内蔵カメラ用アクチュエーター(ピント調節部品)は「北米企業向けは顧客設計によるセンサーシフト型への移行で他社との納入争いが厳しくなり、中国企業向けもしばらく減少する見込み」(業界関係者)。付加価値向上策もカギを握る。
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