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世界共通の基準で評価、TDKが新たな人事制度で生み出したいもの

理念や価値観は共有しつつ世界各地のグループ会社が裁量を発揮する、しなやかで強い組織―。TDKは「真のグローバル企業」を目指し、「次世代育成」「グローバルな人事プラットフォームの構築」「コミュニケーション力の向上」を目標に掲げた人事制度を設けている。

同社は2000年ごろから海外で活発なM&A(合併・買収)を行い、業容を拡大してきた。現在のグループ従業員数10万人超のうち、海外国籍は9割を超える。急速なグローバル化の一方で「一つの企業グループとしてのTDKの強みを、特に人材面で出せていない」(林岳二人財本部副本部長)との課題意識があった。

そこで17年に人財・総務本部(18年の分割後は人財本部)を設置。それまで人事はTDK本社や現地企業の人事部のそれぞれの評価基準で判断していたのを、地域差が生じないように世界共通の基準で評価・実施するように改めた。

特に力を入れているのが、4段階ある次世代人材育成プログラムだ。各段階ごとに選抜された参加者は講義を受けた後、チームに分かれてグループワークを行い、成果を提案形式で発表する。優秀な人材は世界規模で活躍させるとともに、参加者が組織の枠を超えて交流を深め、そこから生まれた自由な発想が新たなビジネスや課題解決につながる「化学反応」も見込む。

コミュニケーション力の向上では、異なる言語の人たちがお互いを理解する目的で作成された枠組み(CEFR)による英語トレーニングを、約1万人の従業員を対象に実施している。「英語力の高さより、自分の思いや考えを伝えようとする姿勢を重視」(林副本部長)している。

「将来を担う人材の層を厚くすることで、組織は多様性を維持しつつ強くなり、一段と成長もできる」(同)と、新たな人事制度を通じ、これまで以上のシナジーを生みだそうとしている。

日刊工業新聞2021年9月7日

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