引退した新幹線のアルミをリサイクル、「N700S」の内装部品材料に

JR東海が初めて活用

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破砕片(右下)→ビレット(左)→成形品(右上)のアルミ水平リサイクル

JR東海は東海道新幹線新型車両「N700S」の内装部品材料として、引退した新幹線車両から回収した再生アルミニウムを活用した。廃車から新車に材料を供給するアルミ合金の“水平リサイクル”を新幹線で実現するのは初。リサイクル事業者や車両、アルミ部品の各メーカーとの協業で確立した。7月1日に営業運転を開始する次世代車両はライフサイクルアセスメント(LCA)の観点からも、画期的な進化を遂げる。

アルミは電力を多く使って精錬する。すでに国内に精錬工場はないため、新地金はすべて輸入品だ。一方でアルミは融点が低く、溶解で簡単に再利用可能で、再生時のエネルギー消費は精錬時に比べて約97%少なく済む。

アルミの再生利用はすでに飲料用缶などで仕組みが完成されている。アルミ缶リサイクル協会によると、2018年度に国内で消費された飲料用缶の再生利用率は93・6%、うち缶から缶への再生率は71・4%だった。

国内で消費されるアルミ合金地金の約4割が、再生利用とも言われる。ただ品質や性能を厳密に管理する必要がある分野で、同じ用途の材料として再生する水平リサイクルは、課題が多く、なかなか進んでいなかった。

鉄道車両のアルミ水平リサイクルは、かつて東京メトロによって地下鉄車両で、試験的に製作された例があるぐらいだ。ひとくくりに車両と言っても、部位でアルミ合金の種別が異なり、解体時に分別して回収しなければならない。そのため、アルミくずとして売却され、添加物を多く含んだ鋳物、ダイカストとしてダウングレード利用(カスケードリサイクル)されている。

JR東海などはハリタ金属(富山県高岡市)が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と共同開発した手法を使って、資源循環の仕組みを実現した。廃車スクラップの破砕片にレーザーを当てて、添加物の含有成分を分析する手法「レーザー有機プラズマ分光分析(LIBS)」はコンベヤー上でアルミ合金を系別に選別でき、生産性が高い。

実現に当たっては日本アルミニウム協会内に、鉄道事業者、リサイクル事業者、車両、アルミ部品の各メーカーが参加する「アルミ車両の水平リサイクル推進委員会」を設置。品質管理などのプロセス認証法を検討した。

新幹線は国内で最も多く作られるアルミ車両だ。省エネルギー、省資源を実現する高速鉄道車両の水平リサイクルは世界初の取り組み。JR東海の担当者は「国内外で、車両のアルミ水平リサイクルの取り組みを先導したい」と意欲を示す。

今回はプロセス確立を主眼に、N700S普通車の荷棚部品で循環利用を狙った。マグネシウムとシリコンを添加した「6000番台」と呼ばれるアルミ合金だ。再生アルミ合金に新地金を混ぜて希釈して使い、現段階の再生材利用率は10%。「今後利用率を高めるほか、循環利用を車両構体の他部位に広げる選択肢を探る」(JR東海担当者)と話す。

(取材・小林広幸)

日刊工業新聞2020年6月16日

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