金属のリサイクルで世界的にも希有な存在に。日本の次世代技術を支えるニッチトップ企業

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古屋堯民社長

市場で圧倒的なシェアを確立した後も、次世代技術を見据え開発の手綱を緩めない-。経済産業省が実施する「グローバルニッチトップ企業100選」からは、さらに進化を遂げる企業の姿が垣間見える。2014年に続く二度目の選定となったフルヤ金属はそんな姿を象徴する1社である。

有機EL一次材料で世界首位

スマートフォン用の電子部品製造に使用するイリジウム製の結晶製造容器(るつぼ)や大容量ハードディスク(HDD)用のルテニウム・ターゲット材ですでに世界シェアの7割を確立している同社が近年、新たにシェアを拡大している製品分野が有機EL(エレクトロルミネッセンス)の発光材料の一次材料に用いられるイリジウム化合物。世界シェアは9割に上るという。加えて鉱山産出量の少ないこれら希少金属の安定供給を実現するため、使用済み製品から回収した金属を、再び高純度で精製する設備増強を進めてきたこともシェア拡大につながっている。

同社が手がけるイリジウムやルテニウムはプラチナ(白金)鉱山の副産物。高い強度や耐熱性など工業用原料としての優れた特性から、今でこそ半導体や電子部品の製造プロセスで広く用いられるほか、燃料電池自動車をはじめとする水素技術の活用や医療分野などさまざまな産業分野の技術革新のカギを握る素材として有望視されるが、開発当初は、その扱いにくさゆえに技術者泣かせの材料だったという。

イリジウム化合物(写真上)とイリジウム化合物使用例

工業製品としてのプラチナを扱っていた設立当初の同社が、その鉱床から得られるイリジウムやルテニウムの将来性に着目したのは1970年代。新たな収益源として育成に着手するものの「大手企業がこの市場に参入してこなかった理由がすぐに分かりました」。古屋堯民社長は当時をこう振り返る。これら希少金属は鉄やアルミといった一般的な金属と異なり沸点が高く加工が難しい。高い機能性は、技術的な難易度の裏返しでもある。「なぜこんな素材に手を出してしまったのかと思う一方で、これからの産業に必要になる。その将来性は確信していました」(同)。

溶解・加工とリサイクル 併せ持つ技術

ひとつの転機となったのは、プラズマ溶解技術の確立だ。原産国の南アフリカから日本に輸入されたイリジウム粉末を5000度以上の超高温で溶解しインゴットを製作できる特殊な装置を導入し、高純度で製作。目的の製品に仕上げる加工技術の蓄積も重ねてきた。

そしていま。これら希少金属は、ハイテク産業の生命線や次世代エネルギーのカギとされる。一方で、ルテニウムの年間生産量は約30トン、イリジウムに至ってはわずか7トン。200トンの白金に比べ大幅に少ない。用途開発を通じて市場開拓を進める一方、顧客に安心して使用してもらうには安定供給が欠かせない。そこで、同社では使用済み製品からこれら金属を回収し、再び高純度化するリサイクル技術も開発した。実際、年間生産量を上回るリサイクル能力を備えており、全出荷量の7割が循環型ビジネスという。同社のように原料の溶解、加工からリサイクルによる高純度化技術まで兼ね備える企業は世界的にも希有な存在だ。

プラズマ溶解炉を導入し成長の原動力となった「つくば工場」(茨城県筑西市)

エネルギーの効率利用もたらす

「数年ごとに世界に通用するオンリーワン技術を生み出していきたい」とさらなる技術開発への意欲を示す古屋社長。目下、京都大学などと共同で進めるのは、構成する原子同士を完全に溶け込ませる「固溶合金」で、ナノレベルを実現し、これを量産化すること。排ガスの浄化や二酸化炭素(CO2)排出を抑え、エネルギーを効率利用できる革新技術として、日本の産業競争力向上につながる可能性を秘める。

経済情勢がめまぐるしく変化するなか、原料の調達や生産などサプライチェーン戦略は日本のみならず世界の企業にとって、これまで以上に重みを増している。特定の国や地域に過度に依存しない資源調達の仕組みを構築する観点からも、同社のビジネスモデルに寄せられる期待は大きい。

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