IoT医療・健康機器にコロナ禍の追い風、遠隔診療の先進国「米国」で売り上げ急拡大
エー・アンド・デイの出荷台数に勢い
エー・アンド・デイがコロナ禍でIoT(モノのインターネット)対応の医療・健康機器を伸ばしている。特に遠隔診療が進む米国では、外出したくないという患者のニーズが高まり、家庭で血圧や脈拍などを計り、スマートフォンのアプリケーション(応用ソフト)で管理、通信する製品・サービスが急伸。2020年度の関連機器の出荷台数は前年度比44%伸び、21年度も足元ではその勢いを持続している。
エー・アンド・デイはとりわけ血圧計に強く、世界約80カ国に輸出し、年間500万台以上を販売している。海外では早くから遠隔診療に対応するインターフェースを整え、約10年前に世界初の近距離無線通信「ブルートゥース」搭載機を投入。19年2月には独自のスマホアプリを投入し、血圧計や体重計、体温計、活動量計などさまざまな機器から無線で受信した情報をスマホで管理。さらにIoTで医療機関と共有できるサービスを導入した。
遠隔診療の先進国だった米国市場において、さらにコロナ禍で「病院に行くことがリスクになり、今や9割がオンライン診療になっている」(尾崎忍執行役員)という状況に。IoT対応機器の売り上げ急拡大につながった。スマホアプリの累計ダウンロード数も直近で25万件を超えた。
21年度の関連機器の出荷台数も足元では20年度並みで推移。ただ今後については半導体不足の影響で製品供給に支障が出始めるとみており、短期的には「さまざまなメーカーがぶち当たっているサプライチェーン(供給網)の課題だ」(同)と機会損失が生じる事態をうらめしく見ている。一方で中長期的には国内でも規制緩和によるオンライン診療の導入も期待でき、自社製品のIoT対応を一層加速させる構えだ。
日刊工業新聞2021年9月10日