世界と肩を並べる研究大学へ、政府が10兆円ファンドで支援する「特定研究大学」制度とは?

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文部科学省で「特定研究大学(仮称)」制度の議論が始まった。世界と肩を並べる研究大学として必要な「経営と教学の分離」、経営トップや事業財務担当者(CFO)らによる「合議体」などの制度設計が議論の核となる。政府が計画する10兆円ファンドを活用した大学への支援は、この特定研究大が対象だ。法整備は2022年の通常国会で行う予定で、各方面から注目を集めそうだ。(編集委員・山本佳世子)

文科省は特定研究大学制度などを検討する「世界と伍する研究大学の実現に向けた制度改正等のための検討会議」を設置した。内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の専門調査会が出した「世界と伍する研究大学の在り方について(中間とりまとめ)」を受け、特定研究大の制度やガバナンスなどを詰める。

整備する特定研究大の仕組みは私立大では私立学校法、公立大ならば地方独立行政法人法で対応可能とみられる。そのため「(特定研究大の)新制度は国公私立大が対象となるが、議論は(国立大学法人法改正の)国立大が中心」(文科省研究振興局)となる。議論の結果は年内のCSTIの最終とりまとめに盛り込まれ、23年度に関連法を施行する計画だ。

特定研究大は多様な連携による社会変革をミッションとし、全活動事業費で年3%程度の成長を前提とする点が大きい。国立大は近年、運営費交付金の傾斜配分である「地域」「特色」「世界」の3類型や、指定国立大制度などを活用して活動を広げてきたが、さらに一段とガバナンスを強化する方針だ。

その要件の一つが「経営トップとしての学長・理事長」「教学(教育・研究)をまとめるプロボスト(筆頭理事)」「CFO」などからなる合議体(人数は3人以上)を置き、最高意思決定機関とすることだ。国立大では理事らが集まる役員会を設けており、8人の理事がいる大規模な大学も存在する。一方で、経営上の最終決定は学長が下すものの曖昧な部分もある。

すでにプロボストは指定国立大で活用されている。CFOは欧米の先進的な大学が導入し、企業出身者も多い。日本で導入するCFOは「年3%の成長」の目標を背負い、通常の財務や企画の担当理事より責任が重いポストと言える。

また、合議体が学長選考の役割を担う想定だ。「学長選考会議が学内意向投票の結果とかけ離れた候補者を選んでいる」という教職員の不満が研究大学で出ている。経営と教学の分離は全ての国立大に課すものではないが、合議体による選考に注目が集まりそうだ。

同制度は公立・私立大学も対象でファンド支援も控えているだけに、政府の後押しを受けて世界をリードする研究大学に成長できるかどうか、各大学の力量が問われている。

日刊工業新聞2021年9月9日

COMMENT

山本佳世子
編集局科学技術部
論説委員兼編集委員

研究大学の国立大は近年、「指定国立大学」の指定を得ることを一つの目標として動いてきた。「今、指定を受けている9大学の中の一部が特定研究大学になる」ということは間違いないだろう。もっとも新制度は私立大・公立大も対象ということで「それはどこか」、また「合計何校か」に関心が集まるのは当然だ。しかしポイントとなる合議体が、国公私立大で異なる通常のガバナンスの仕組みにどうそれぞれ載ってくるかが、よくわからない。私はこの会議の中で「国立大なら役員会の理事がいるのにそれでは不十分、というのはなぜか?」と質問した。「当事者にしてみれば心外なのでは?」という感想も付けて。答は、「理事は学長の下で業務を執行する役目、合議体は意思決定と監督をする役目」というものだった。企業と対比してみると、理事が教学(教育と研究)などそれぞれの担当を持つ「執行役員」で、合議体メンバーが経営側の「取締役」と理解してよいだろう。「経営と教学の分離」のイメージは、これでだいぶ具体的になった。

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