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大学教育の実験・実習設備をDX化、文科省が75億円予算要求する新事業の中身

文部科学省は2022年度から大学教育の実験・実習設備をデジタル変革(DX)化する事業を始める。スマート農業やIoT(モノのインターネット)、人工知能(AI)による医療診断といった先進技術とデータを活用する実践教育において、国公私立大学の機器購入を支援する。産学連携による調査やカリキュラム整備と合わせて約60件を支援。22年度予算の概算要求に75億円を盛り込む。

農学系はセンサーによる作物の生育観測、ロボット農業やIoT栽培システムなどを想定する。センサー装備のハウス栽培設備や情報管理システムなどが対象になる見込み。工学系はビッグデータやIoT活用、3D成形模型でのシミュレーション実験など。医療系は診断や機器操作におけるAI活用などを見込んでいる。

先進技術を活用し、収集したデータを分析して現場の取り組みを高度化するカリキュラムを想定する。1件当たりの予算は1億―2億円程度で、事業期間は最大3年間。

大学の機器DX化は研究用で進みつつある。一方、教育現場では機器の老朽化が目立つ状況にある。そこで新事業では、学部生など即戦力人材の資質・能力を高める狙い。

日刊工業新聞2,021年8月27日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
共用・遠隔化を目的とした「研究」設備の予算が多大についたのは、2020年度のこと。文科省の本予算&補正で研究現場は大いに湧いた。特定グループのプロジェクト研究での機器購入と異なり、学内の教員や研究者、大学院生の研究環境全体を底上げするチャンスだったからだ。対して「教育」つまり学部生の学生「実験」や「実習」で使う設備は、「まだまだ使えるじゃないか」などと評され、以前から限られた予算の中で後回しにされがちだった。今回はそこに、単なる設備更新ではなく、産業社会のDX化に対応する人材育成という切り口で予算獲得を狙う。うっかりしていたが、なるほど大事な視点だと気づかされた。

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