文科省がデータ駆動型の材料研究開発プロ始動。10年間で目指す基盤とは?

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文部科学省は2022年度にデータ駆動型の材料研究開発プロジェクトを始動する。材料開発と先端計測技術、理論計算、データ科学を有機的に連携させる。事業期間が10年間となる長期プロジェクトを走らせ、マテリアル領域とデジタル領域の融合人材を輩出する基盤を整える。22年度予算の概算要求に数十億円規模で盛り込む方針。政府が4月にまとめた「マテリアル革新力強化戦略」を実行する中核事業になる。

10年後を見据えデータ科学と親和性の高い材料領域を選ぶ。エネルギー変換材料やサステナブル材料、量子・電子材料などの8領域で研究テーマや計画を作成する。材料研究でデータを蓄えることは幅広い分野に相乗効果が見込める。

例えば生分解性樹脂では、強度や結晶性、相転移温度などの材料データと生分解に関わる微生物群の局所的な生態系データを掛け合わせることで開発が加速している。材料と、農業や海洋、医療などとのデータ連携が重要になる。

材料を用いた製品設計から分解性評価の国際標準化まで戦略的にデータを集めて活用する研究基盤が産業競争力に直結する。

こうした戦略を描き、実践するにはマテリアル領域とデジタル領域の融合人材が不可欠となる。大型研究事業を走らせ、実践の中で各分野に世界をリードできる専門家や研究チームを育てる必要がある。

そこで21年度の調査期間を含め30年度までの10年間の事業として進める。同分野の研究事業としては12年度に始まった元素戦略プロジェクトの後継に当たる。データ活用を軸にすることで、材料研究のための予算でなく、幅広い分野との相乗効果を狙う事業にする。

研究開発のDX推進へデータ基盤の高度化も

文部科学省は大学などの研究開発のデジタル変革(DX)を推進するために全国的な研究データ基盤の構築・高度化事業を2022年度に始める。22年度予算概算要求に盛り込む方針。各研究分野や研究機関で蓄積されるデータのマネジメント機能を担うソフトウエアを開発する。併せてデータを整理し、活用しやすいように調整するデータマネジメント人材を育成する。予算額は十数億円規模とみられる。8月末の概算要求に向けて調整を進める。

ソフトは研究機関や分野ごとに運用されるデータ基盤の連携やデータ管理、活用支援機能などを開発する。データに付加するメタデータの自動生成機能なども想定する。ソフトを活用して情報分野に限らず、生命科学や物質科学など幅広い分野にデータ駆動型研究を広げる。データ連携で異分野融合や未開拓分野の研究を振興する。

人材育成ではデータマネジメントの講習や教材製作などを検討する。研究領域ではデータの質と規模だけでなく、データ取得から整理、更新などデータの蓄積の仕方自体が競争力になるほか、研究対象になっている。新事業を立ち上げることでデータ基盤の高度化機能を開発しつつ、研究振興と人材育成につなげる。

具体的な開発項目や育成法は大学などから募る方針。大学は政府の人工知能(AI)戦略を受けてデータ科学やデータ活用の人材を育成してきた。データマネジメント人材の育成事業と相乗効果が見込める。23年度には公的研究資金を使う研究にはデータマネジメントプランが求められるようになるため、対応が急務になっていた。

日刊工業新聞2021年8月20日

COMMENT

小寺貴之
編集局科学技術部
記者

10年続いた元素戦略がデータ駆動型科学を軸とした後継事業に託されます。異分野データ連携を促す研究開発DXの新事業と合わせても概算要求時点で50億くらいでしょうか。財務省から返ってくると合わせて35億くらいになってるような気がします。データ駆動やデータ連携は新しい形のビッグサイエンスです。大きな放射光施設、大きなロケット、大きな船、スパコン、宇宙探査機を作るのと同様に大きな予算を投じてインパクトのある連携基盤を作らないといけません。ですが先に挙げたモノよりわかりにくいです。メタデータや管理ポリシーなど、すり合わせが多くて大変です。しかも異分野の先生が互いの言葉を勉強しながらやるのでケンカ別れするし、統率は取れないし、投資効果なんて計算できないし、米中相手にパワーゲームに陥ることはそもそもできないと思ってる雰囲気さえあります。ですが世代を超えてデータを使って、データ連携で異分野をつないで新領域を打ち立てる。その基盤を作る挑戦になります。少し前まで、日本人の強みは細かなすり合わせといってたのであれば、データ連携に意味のある基盤を効率よく作る素質は、ないこともないのではないかと思います。データ駆動やAIを使って進める科学は、データ量や投資規模だけで論文が書ける期間はもう何年もないはずです。その次を仕込まないといけません。財務省から増額されて返ってくる奇跡が起きないかなと思う次第です。

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