「買う前に試す」化粧品の常識が変わった。資生堂・花王・コーセーのデジタル戦略は?
化粧品業界で、肌に直接付けたり触れたりしない「非接触」のサービスが増えている。資生堂は7月から主力のブランド「SHISEIDO」で、撮影するだけで肌の状態を測定する機器を本格的に導入した。新型コロナウイルス感染拡大に伴う衛生意識の高まりで非接触へのニーズが強まったことに加え、デジタル化が「買う前に試す」というこれまでの常識に変化をもたらしている。
資生堂の新たなサービスは百貨店中心に50店舗以上で展開。これまでは測定機器を肌に直接当てていたが、今回は顔全体を撮影するだけ。数十秒で肌の透明感や張りなどを指標化し、悩み別に商品も提案する。コロナ禍の下で開発が加速したといい、担当者は「店舗ならではの楽しみを体験してもらいたい」と話す。
各社が進めてきた化粧品事業のデジタル化も、「非接触」が重視されるコロナ禍の衛生対策を後押しする。花王はメークブランド「KATE(ケイト)」で、仕上がりをスマートフォン画面で確認できる店頭サンプルを設置した。拡張現実(AR)を活用し、サンプルの2次元コードを読み取ると付けた時の印象を動く画像で見ることができるのが特徴。他のブランドでも色味や質感を体感できるようなデジタルコンテンツを拡充している。
コーセーは東京・銀座の旗艦店で、ブランド横断で口紅や眉墨などを自分の顔で疑似的に試せる「メイクアップシュミレーター」を提供している。デジタル技術を使っていつもと違う化粧にも挑戦できるサービスだが、「直接付けずに試せることから顧客の安心感にもつながっている」(同社)という。
日刊工業新聞2021年8月27日