東工大が「すずかけ台キャンパス」再開発。大型投資を支える仕組み

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東京工業大学は横浜市緑区のすずかけ台キャンパスに大型研究の施設・設備を集約し、国際的な最先端研究拠点とする再開発に着手した。整備資金は田町キャンパス(東京都港区)に建設する高層ビル収入を償還原資とする大学債発行で得る。2025年をめどに、すずかけ台全体を整備する予定。同大は近年、大学改革で他大学をリードしており、キャンパス整備との連動に注目が集まりそうだ。(編集委員・山本佳世子)

すずかけ台は東京工業大学の次世代研究基盤戦略で中核となるキャンパスだ。本部の大岡山キャンパス(東京都目黒区)と比べ敷地に余裕があり、学生は大学院生が主体で研究所機能もある。益一哉学長は「大型研究施設を1カ所に固めることで、著名な外国人研究者を招く場合も対応しやすい」と説明する。

同大は研究機器の学内外共同利用や、それを支援する技術職員の育成でも先進的な大学だ。すずかけ台では遠隔操作対応や自動化した研究機器を設けるとともに、研究者の交流スペースの整備も始まった。建て替えなどの大規模な再開発も、横浜市との協議を含めて検討を開始した。

研究大学のオープンイノベーションに向けた産学連携は近年、拡大の傾向にある。同大はすずかけ台に1社当たり300平方メートルの専用スペースを貸し出すケースもある。再開発にあたり、こうしたケースも増えそうだ。一方、都市部での人的交流を重視するベンチャーなどは、田町の高層ビルに設けるイノベーションセンター「The NEST(仮称)」を活用する。

キャンパス再開発は、16年度に始まった国の教育改革が契機となった。学部・大学院を統合して「学院」とし、硬直化していた組織を再編した。これにより大岡山とすずかけ台にまたがる全学改革が進みやすくなった。

次の転機は18年度末に同大が世界最高水準の教育・研究を目指す指定国立大学法人に指定されたことだ。同時期に、国立大の土地の規制緩和を活用して田町の高層ビル建設が可能になった。当初は土地の貸付料収入を年10億円と試算していたが、田町地区の大規模再開発の影響で収入額が増え、税金などを差し引いた真水で年30億円の収入が75年間続く見込みとなった。

これを機に大学債を23―24年に100億円規模で発行する計画が持ち上がった。国の施設・設備予算だけに頼らずに、大学債で集めた資金による大型投資が可能になる。この仕組みが、すずかけ台の再開発を支える大きなきっかけとなった。

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日刊工業新聞2021年8月19日

COMMENT

山本佳世子
編集局科学技術部
論説委員兼編集委員

東工大はほかに、事業会社設立、産学共同研究の一部の間接経費4割化、授業料値上げなど、「政府の示す改革をすべて実施している」との評判が高い。これは理工系ならではの進取の気性に加えて、単科で、中規模で、国内トップレベルという状況がある。教員(助教以上)は約1000人、学部生約4800人、大学院生5300人(学部生より大学院生の方が多い)という中規模の研究大学なら、改革への合意が得やすいし、効果も目に見えるからだ。旧帝大など総合大学は文系も抱え、学内の合意形成が容易でないのに比べ、同大の一番の強みといえるだろう。

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