東大と東工大が大規模土地開発、大学らしさをどう実現するか

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田町のビル完成予想図(NTT都市開発・鹿島・JR東日本・東急不動産グループ提供)

国立大学が保有する土地に定期借地権を設定し、不動産会社などの協力で70年といった長期事業を行う大規模計画が進み出した。東京工業大学は田町キャンパス(東京都港区)での高層複合ビル建設で、NTT都市開発など4社と事業協定を結んだ。東京大学は白金台キャンパス(同港区)と目白台キャンパス(同文京区)で、分譲マンションやクリニックに活用する計画で21年度に着工する。産学・地域連携など大学らしさを生かした財務基盤の強化策として注目を集める。(取材=編集委員・山本佳世子)

東工大がNTT都市開発、鹿島、JR東日本、東急不動産の4社グループと計画するのは、JR山手線の田町駅前で地上36階地下2階、商業施設やオフィスが入る複合ビルなどだ。東工大は延べ床面積1万平方メートル超と国内最大規模のインキュベーション施設を他大学との連携にも使い、これを含む計2万3000平方メートルを産学連携や社会人教育の大学施設にする。事業金額の規模は非公表。供用開始は2031年だ。

現在はここに付属科学技術高校と、社会人向け大学院などで使う9階建てのキャンパス・イノベーションセンターがある。利便性が高いため30年前にも活用構想が練られたが、高校の移転先や財源などがネックだった。それが2004年の高校設置基準改定で大学とグラウンド共用が認められ、同大大岡山キャンパス(同目黒区)への移転が視野に入った。さらに16年の国立大学法人法改正で、期間限定の広い遊休地の活用が可となり、企業との破格の規模の共同事業に踏み出した。

今月開いたウェブでの記者会見で益一哉学長は「財政基盤強化へのインパクトは大きい。同時に産業界との接点であり、新産業を興す再開発であり、本学の飛躍につながる」と強調した。代表企業のNTT都市開発の辻上広志社長は「ビジネス街と住宅街が近接し、海沿いの倉庫群を活用するなど、地域との実証実験も期待できる」と、大学らしさを生かした土地開発の魅力に言及した。

一方、東大は一足先に、医学部や付属病院の実践教育やサービス実証を組み合わせた建物の建設を、都心2カ所でスタートする。三井不動産との白金台キャンパス再開発のうち、ハイグレードマンションでは一時金の等価交換も導入。大学の看護師寮(職員寮)としての一部住戸の取得や、完成後に東大の単独所有になる新研究施設棟の建設を組み合わせた。「単なる土地貸しでなく、社会課題解決に向けた大学の研究・医療コラボレーションだ」と平野浩之副理事・財務部長は説明する。

地域との関係は重要だ。ビジネスで発展を図る港区に対し、目白台は居住者重視の文京区だ。そのため三菱地所との目白台キャンパス再開発では、より多様な医療関連施設とする。一時金はなく、地代だけ入り続ける形で次世代の東大関係者を支える。収支に加えて、研究・教育・社会連携でのメリットがあってこその大学の事業だ。土地の貸し付けが終了する50年、70年後、大学人そして国民はどう実感するのだろうか。

関連記事:国立大の土地活用「本命」の東大が動いた!三井不動産や三菱地所が事業協力

日刊工業新聞2021年3月4日

COMMENT

山本佳世子
編集局科学技術部
論説委員兼編集委員

規制が緩和された当初はやりやすい駐車場転換が多く、18年の私の記事では東京医科歯科大、長崎大、岡山大の例を紹介している。当時から気になっていた大型の開発案件が、ここへきて本格化してきた状況だ。私が気になったのは、「国立大学なのに、賃貸業なんてやっておかしい」との感想を持つ教員が、それなりにいるのではないか、ということだった。が、今のところは大きな声は聞こえてこない。専門家の集まりである教員層にとっては、「研究費の増減と直接は関係ない」ということで関心外なのかもしれない。それだけに一般社会の方が、新たな活動の良い点も悪い点も、注意していくべきなのかもしれない。

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