ライオン・掬川正純社長が重視する「人づくり」。原体験は大きな失敗

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掬川正純社長

誰もがチャンスつかめる組織に

「会社は“人”であり、経営は“人づくり”。全社員がやりたい仕事を持てる会社にしたい」

人材育成を重視するライオンの掬川正純社長は、言葉だけでなく実際に“働きがい改革”を進めている。独自のeラーニング講座を設けたほか、長期的に自身のキャリアを考え、1年に1度、異動を希望できる制度を導入している。希望は異動したい先の上長にも伝えられ、社員はやりたい仕事に就くチャンスをつかみやすい。

「経営において戦略は重要だが、どんなに素晴らしい戦略を立てても、組織力がなければ実行できない。組織力はどれだけ多くの人が高い能力とやりがいをもって仕事をしているかで決まる。会社の足腰となる人づくりが私の最優先課題」

人材の大切さと組織力を意識するようになった原体験は、自身の大きな失敗にある。洗濯用洗剤の主力が粉末から液体へと変わり始めた頃、液体洗剤開発のリーダーを任された。初めてのリーダー職に張り切り、液体洗剤の開発経験がある部下の意見を聞かず、粉末洗剤の知見をそのまま持ち込んだ。結果、できあがった液体洗剤は売れなかった。

「チーム全員の力を引き出せれば、売れる良いモノが作れたはず。必要に応じて仕事を他人に任せることの重要さを痛感した。仕事を任されれば、その人も成長する」

部下の成長の機会まで奪ってしまったことを反省する一方で、役職が上がるにつれできる仕事の範囲が広がるという発見もあった。生涯、職人のような研究者として生きていくつもりでいたが、今では会社経営にやりがいを感じている。

「できる仕事の範囲が広がるという意味で、役職はやりたいことを達成する手段になる。ただ、重要なのは手段の前に目的。特定の役職を目指すのではなく、『自分のやりたいこと』を見つけて実現することが大切だ」

幼い頃からアニメ『ムーミン』に出てくる旅人「スナフキン」に憧れ、入社当時は一匹おおかみタイプだった。熱意が強い分「思い入れで仕事を進めてしまう癖があった」が、自身の失敗経験や製品開発などを通じて他者と接することで、さまざまな人とコミュニケーションをとる必要性と多くの人と関わって仕事をする楽しさを覚えた。

「数々の失敗で学ぶ姿勢の重要さを知った。どんな人にも成長するチャンスがある。チャンスを全員に与える組織でありたい」

社員の成長を見守る優しさが笑顔にあふれ出る。(門脇花梨)

【略歴】
きくかわ・まさずみ 84年(昭59)東大農卒、同年ライオン入社。12年取締役、16年常務、18年代表取締役専務執行役員、19年社長。神奈川県出身、61歳。

日刊工業新聞2021年7月13日

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