ライオンが化学物質規制情報を収集するRPA開発、年1000時間の削減効果
ライオンは製品に使う化学物質の規制情報を自動で収集し、抽出するRPA(ソフトウエアロボットによる業務効率化)を独自に開発した。洗剤などの日用品に使用していいかどうかなど、化学物質に関する国内外の新規規制情報150件をリストにして表示する。特に重要なワードは赤字で示し、必要な情報をピックアップしやすくした。情報を供給している各ウェブサイトへのリンクも張られており、元の情報にもすぐにアクセスできる。
研究開発本部安全性科学研究所の山口文子主任は「従来は人の手で関連サイトから情報を収集、抽出していたため、膨大な時間がかかっていた。年間1000時間程度の作業時間が削減できるはずだ」と笑顔をみせる。
プログラムを開くだけで、新規規制情報がエクセルのリストになって表示される仕組み。これにより、各物質ごとに検索するなどの作業が不要となる。
従来、規制情報は経験豊富なベテラン社員が時間をかけて実施する必要があった。どのサイトにどのような情報が載っているか、どのような用語に着目して検索するかなど、判断が難しい。これがRPAの導入で、経験の少ない社員にも任せられるようになる。
山口主任は「規制情報において最も重要なのは情報を『解析』する作業。にもかかわらず、今までは収集、抽出に時間を取られていた。今後は付加価値の高い仕事に優秀な社員を充てられるだろう」と、利点を明かす。
同プログラムは既に製品開発に必要な国内外の情報を収集、解析する安全性科学研究所(神奈川県小田原市)に導入済み。収集した情報は製品開発や既存製品の改良などに活用されており、業務の効率化に一役買った。
独自のRPAはフリーランスのデータサイエンティストと共同開発した。“働きがい改革”を推し進める同社において、副業人財を活用した成功事例だ。独自RPAの開発、導入が多角的な効果を発揮している。(門脇花梨)