総合商社がEV電池を再利用した蓄電池ビジネスを加速する事情

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伊藤忠のEV用電池を再利用した蓄電システム「ブルーストレージ」

総合商社が電気自動車(EV)のバッテリーを再利用した蓄電池ビジネスを加速している。伊藤忠商事が企業向け蓄電システムを開発したほか、住友商事は大型蓄電設備の設置に向けた取り組みなどをしている。需給調整市場が4月に開設したのを商機とするとともに、再利用によりEVの使用済みバッテリーの処理をどうするかという課題解決に貢献する。(森下晃行)

伊藤忠 企業向けシステム開発

「脱炭素というと発電ばかり目が行くが、消費電力を減らすことも重要だ」と伊藤忠商事の石井敬太社長は指摘する。同社はこれまで家庭向け蓄電システムを販売してきたが、企業向けにEV用電池を再利用した蓄電システム「ブルーストレージ」を開発、6月末に稼働を開始した。今冬の商用化を目指す。

EV用リチウムイオン電池は充放電を繰り返すと充電可能容量が徐々に減少する。容量が80%を下回るとEVには適さなくなり処理が課題となっていた一方で、産業用途では活用の余地がある。

ブルーストレージは工場や物流施設のほか、再生可能エネルギー発電施設への販売を見込む。電池はバスやタクシーなど商用車で使われていたものを中国から調達する。「調達時期の見通しが立てやすく、使われ方が一定のため性能のバラつきが小さい」(同社)という。

住商 大型設備着々と

EV用電池の再利用で先行する住友商事は、蓄電システムを手がけるフォーアールエナジー(横浜市西区)を日産自動車と共同で10年に設立。17年に富士電機と共同で蓄電システムの販売を開始し、日本ベネックス(長崎県諫早市)に導入した。現在は22年度以降の大型蓄電設備の設置に向け取り組むなどしており、24年度の需給調整市場への参入を目指している。

4月に開設された電力の需給調整市場では、再生可能エネ発電の需給を一致させるための“調整力”を取引する。太陽光や風力などの再生可能エネは電力供給が不安定だが、蓄電システムと組み合わせて欠点を補える。余剰電力をため、必要なタイミングで放出して需給を調整する。伊藤忠商事と住友商事の両社は新たな収益源として同市場への参入を狙う。

また、海外でEV用電池の再利用を進めているのが三井物産だ。19年に仏ルノー、独ザモビリティハウスなどと共同で電力調整の事業会社「Tokai2」を立ち上げ、ドイツでサービスを展開している。

ルノー製EVの電池を再利用した蓄電システムを使い、独国内向けに電力供給の周波数調整サービスを提供する。三井物産エネルギーソリューション本部の松本陽介部長は「今後も電力とモビリティー領域の融合による付加価値提供を推進していく」と説明する。

日刊工業新聞2021年7月14日

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