2022年にも供給へ、国産の新型コロナワクチン「saRNA」とは?
VLPセラピューティクスジャパン(東京都千代田区、赤畑渉代表職務執行者)は、新型コロナウイルスワクチンの開発に名乗りを上げた。7月にも日本で第1相臨床試験を開始。2022年に国内で承認取得し、22―23年の供給を目指す。既存のRNAワクチンよりはるかに少ない投与量で発症予防効果が期待できるのが特徴で、有力な国産ワクチンとして注目される。
投与分、RNAの20倍確保
新型ワクチンは「saRNAワクチン」と呼ばれ、免疫の誘導に関わるリボ核酸(RNA)が体内で自己増殖し、大量の抗原をつくりだす仕組み。理論的には単位量あたり、従来のRNAワクチンの20倍に相当する投与分を確保できるという。
ウイルスが細胞へ侵入するのを効果的に防ぐ独自の設計を施したのも特徴。ウイルスと細胞の結合部を狙い、ウイルスの病原性を抑える中和抗体を効率的に作成する。非臨床試験では変異株への有効性も確認した。
共同開発する医薬基盤・健康・栄養研究所(医薬健栄研)には、ワクチン接種者の血液から免疫反応を分析できる先端機器を設置。医薬健栄研の山本拓也免疫老化プロジェクトリーダーは「研究機関として、免疫反応などを評価する技術で新たなモダリティ(創薬手法)を支えたい」と述べる。製造は提携する富士フイルムが担う。数カ月で1億回分の生産が可能になると見られ、将来は海外への供給も見据える。
インタビュー/代表職務執行者・赤畑渉氏 ウイルスの弱点突く設計
国産ワクチンの実現に向けVLPセラピューティクスジャパンを設立した赤畑代表職務執行者に、ワクチンビジネスの勝算などについて聞いた。(大阪・中野恵美子)
―新開発のワクチンの強みは。
「saRNAの技術基盤に加え、ウイルスの弱点を突く仕組みが競合と差別化できる。ただ小規模なベンチャーなので、行政からのサポートや産学との連携が欠かせない。医薬健栄研との共同開発など情報発信することにより透明性を確保し、信頼感あるワクチン開発につなげる」
―国産化の重要性が高まっています。
「米国立衛生研究所(NIH)での研究を背景に、(13年に設立した米VLPセラピューティクスで)がんやマラリアなどを対象にワクチンを開発してきた。新型コロナの拡大を機に(日本子会社を設立し)日本の家族や友人を守りたい思いで開発に着手した。早期承認制度について議論されているが、当社では国民の要望とバランスを取りながら、安全性を担保したワクチンを提供したい」
―勝算は。
「感染症ビジネスというのはリスクが大きく、大企業からは敬遠されがちだ。だがワクチンは日々の健康な生活を支える縁の下の力持ちと言える。新型コロナ以外にも、アフリカをはじめ世界中で感染症対策は課題だ。ベンチャーにとって長期的な視点で有望な市場と捉えている」
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