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東大がデータサイエンス・AI教材を他大学や高専に無償提供する理由

東京大学数理・情報教育研究センターは数理・データサイエンス(DS)・人工知能(AI)の「応用基礎レベル」教材を開発し、他大学・高等専門学校向けに無償提供を始めた。同レベルのモデルカリキュラムに準拠し、各大学や高専はスライド教材をページ単位など自由に利用できる。専門教員や教材が不足する人文科学系をはじめ、全国の大学・高専のDS教育を後押しする。

教材は提供者の出す条件を守れば自由に使える著作権ルール「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス」により、学生の独習を含め大学などでの教育で使える。大学などはノウハウ不足でもDS教育に必要な学習項目や知識・スキルを把握し、授業科目を構築することが可能になる。24日を皮切りに同教材を使った模擬授業などワークショップを開く。

東大数理・情報教育研究センターは政府が進めるAI戦略に対応し、120の大学などが参加する「数理・DS教育強化拠点コンソーシアム」の幹事校を務める。すでに「リテラシー(読解記述力)レベル」のモデルカリキュラムと教材や、応用基礎レベルのモデルカリキュラムをウェブ上で公開している。

「数理・データサイエンス・AI」教育に大きなうねり、教員不足にどう対応するか
日刊工業新聞2021年6月24日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
政府のAI戦略に沿って、リテラシーレベルと応用基礎レベル、それぞれのモデルカリキュラムと教材が出そろったのは一里塚だ。DS教育の浸透には「教員がいない」「教材がない」が一大課題だったためだ。それだけに今後は、どの大学もこの言い訳を使う訳にはいかない。取り組みにおける真剣度合いが明確に見えてしまうことになりそうだ。

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