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解禁された株主総会「バーチャルオンリー」は広がるか

解禁された株主総会「バーチャルオンリー」は広がるか

まずは上場企業に解禁する

コロナ禍を機に、株主総会の在り方が変化の兆しを見せている。9日に産業競争力強化法等改正法が成立し、上場企業がオンラインのみで開催する「バーチャルオンリー株主総会」が可能になった。非接触ニーズだけでなく、遠隔地に住む株主の利便性向上の観点からも導入に期待する企業もある。一方で円滑な運営には、企業ごとのルールづくりが重要になる。

バーチャルオンリー株主総会は会社法の特例として上場企業が経済産業大臣や法務大臣の確認を受けて総会での特別決議で承認を経た後に定款変更で可能となる。株主の質問や動議を受け付ける要件も定め、海外のように一部で参加者が行使できない状況を避ける。

企業には、通信責任者を設けて通信障害で視聴や質問できない事態が生じないように求められるほか、ネット利用に慣れない株主に配慮するため事前に書面で内容の提示が問われる。一方で本人確認や動議の取り扱い、賛否に確認方法などは各社の方法に委ねられる。

改正法施行から2年間は定款で定めていると見なし、間近に控える今年の株主総会シーズンにも対応する。ただ、3月期決算企業は会社法の規定に基づいて既に定時株主総会の招集を通知しているため実質的に難しい。29日に実施する武田薬品工業などは定款変更の議案を示し、今後の総会で可能な体制を整備したい構えをみせる。

バーチャルオンリー株主総会を求める声は、コロナ禍で急激に高まった。2020年6月の株主総会シーズンには122社が会場とオンラインで実施するハイブリッド型の株主総会を開いた。海外株主比率が高い企業や総会の開催コスト低減を図りたい企業を中心に、バーチャルオンリー株主総会が広がる可能性が見込まれる。一方で非上場企業は株主数の少なさなどから対象外となった。上場企業を起点とした動きが非上場企業まで広がるかは今後の展開次第となりそうだ。

日刊工業新聞2021年6月17日の記事を一部修正

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