「オンライン株主総会」定着へ。のしかかる重荷

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富士ソフトの会場。インターネット上からも議決権行使ができる

新型コロナウイルス感染症拡大で外出を控える行動が定着する中、株主総会のオンライン化がじわりと進んできた。株主総会をライブ配信する「参加型」だけでなく、株主が会場に出席した場合と同様にリアルタイムで質問や議決権行使ができる「出席型」を導入する企業が出てきたことが特徴だ。通信遮断のリスクなど課題が指摘されるが、新型コロナを契機に定着していくか注目される。(取材・高島里沙)

12月期決算の富士ソフトは3月13日、初めて出席型のオンライン株主総会を開いた。参加は11人で、リアルの会場に赴いた株主を合わせた合計170人の出席者の6・5%を占めた。富士ソフトは事前に電話対応窓口を用意し質問に応じたほか、通信切断リスクに備えた。同社の広報担当者は「無事に対応できてほっとした」と安堵(あんど)する。

ソフトバンクグループ傘下のZホールディングス(HD、旧ヤフー)は、23日に出席型のオンライン総会を開く予定。通信切断や外部からのサイバー攻撃リスクについても社内で検証した。

大和総研によるとコロナ禍で3社程度が出席型のオンライン総会を開いたという。富士ソフトは今回、自社システムを使って出席型総会を開いた。「システムに関する問い合わせが数十社から来ている」(同社広報担当者)という。

ウィズコロナの状況下での3密回避にオンライン総会は有効な手段となるほか、感染症問題に関係なく遠方の株主が参加しやすい利点もある。オンライン化への企業の関心がじわりと高まっている状況だ。

ただ普及に向けたハードルは低くない。国内では、会社法の規定で株主総会の開催にはリアルな場所の確保が必要となり、オンライン開催は二重の負担になる。

また通信の切断によって株主が適切に権利を行使できない事態に対処するための体制整備も重荷だ。富士ソフトは今回の出席型オンライン総会で、スタッフや機材の手配で主に社内リソースを活用し電話対応窓口を整備した。「(対応できる株主の人数は)100人程度が限度だっただろう」と分析する。

米国ではオンライン開催のみの株主総会が認められており、9割の企業がオンラインのみだという。

通信遮断になった際に日本では株主が決議を取り消すよう求められる権利があるなどルールに違いがあり、日米で単純比較はできないが、大和総研政策調査部の鈴木裕主任研究員は「米国でも通信遮断リスクはあるが、それを上回る利点がオンライン総会にあると認識する企業が多く、株主もメリットを享受している」と指摘。会社法の見直しなどで日本でも「リアルな場所の確保を必要としないオンライン化を進めるべきだ」と話す。

日刊工業新聞2020年6月19日

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