法人カード普及に挑む。クレカ大手それぞれの一手
クレジットカード大手が法人カードの普及に向けて一手を打っている。法人カードは企業間取引の市場規模の割には利用が少ない。各社は経費精算システムとの連携強化で利便性を高め、利用促進を図る。法人カードに新サービスを採用する動きもある。(戸村智幸)
あるカード大手の推計では、国内の企業間取引市場は約1100兆円あるが、カード決済の比率は1%に満たない。米国は約5%とみられ、日本の低さが目立つ。根強い現金主義が背景とみられる。
この市場にカード大手は経費精算システムとの自動連携をテコに、利用を促す戦略だ。法人カードの利用データを同システムに入力する作業などを自動化し、手間を抑える。2020年10月の電子帳簿保存法改正により、キャッシュレス決済の利用明細データがあれば、紙の領収書が不要になったことが追い風だ。
三井住友カードは独SAP傘下で、同システム国内最大手のコンカー(東京都中央区)と組み、一部データの自動連携を21年4月に始めた。例えば、経理担当者が出張などの請求書とカード請求情報が一致しているか確認する作業を不要にできる。
両社は「連携するデータを今後広げる」(三井住友カード)ことで、22年度には経費精算業務の完全自動化を目指す。経費利用の事前申請から利用データ入力、承認まで一連の作業を自動化する。
法人カードの一形態で、物理カードを発行しないバーチャル法人カードでも、経費精算システムとの連携が進む。
三菱UFJニコスは米マスターカードと組み、連携に対応したカードを21年4月に始めた。利用する社員ごとにカードと番号を発行する。上限金額など利用条件を設定し、使い過ぎを予防できる。
利用データはマスターカードのシステムを経由し、コンカーの経費精算システムと自動連携する。バーチャル法人カードで、利用条件を決めた上で、同システムに自動連携するのは日本初という。
法人カードの新サービスに積極的なのは、クレディセゾンだ。中小企業向けに5―6月に発行した3種類のカードの特徴は、支払金額の最大1%キャッシュバック。0・5―1%が後日還元される。
個人向けも含め、各社のカードは支払金額の一部相当のポイント付与が一般的だ。法人向けでは、JCBが以前からキャッシュバック型カードを提供するが、事例は多くない。クレディセゾンは3月、個人向けにキャッシュバック型カードを始めており、法人向けにも採用した格好。キャッシュバック型が法人カードで今後広がるか注目だ。