工業用ミシンで世界シェア3割のJUKIが家庭用を強化、差別化のポイントは?

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ユーザーの声を新製品の開発に反映する

縫製向けの工業用ミシンで世界シェア30%を握るJUKIが家庭用ミシンにも力を入れている。現在の中期経営計画では、2018年12月期に47億円だった家庭用ミシンの売上高を、22年12月期に104億円へ引き上げる方針。連結売上高に占める比率は約5%から約9%に上昇する。工業用で培った耐久性や信頼性を武器に家庭用でも「ファン」の獲得を目指す。ユーザーの声を反映し、使いやすさを追求した新製品の開発にもつなげる考えだ。(川口拓洋)

20年12月期は新型コロナウイルス感染症の拡大による「巣ごもり需要」のため、家庭用ミシンの売上高が好調に推移した。一過性ともみられたが、JUKI縫製機器&システムユニット家庭用ミシンカンパニーの斉藤顕カンパニー長は「需要は高いレベルでとどまっている」と明かす。現在はマスクの供給が安定しており「洋服などいろいろな物を作製するニーズに変わっている。使う楽しさが見直された」と続ける。

工業用ミシンは1機種1機能が基本。縫い速度は毎分5000針以上と高速だ。家庭用は同800―1000針と工業用の5分の1以下となっている。一方、家庭用の最新機種には液晶パネルを搭載しており、スマートフォンのような操作性が魅力。Wi―Fi(ワイファイ)に接続でき、動画投稿サイトなどの映像を見ながら製作できる。

特に同社の家庭用ミシンは中級から高級機の位置付け。工業用のノウハウを注入し耐久性や静音にも優れる。利用者の中でもヘビーユーザーや職業用で利用される。

斉藤カンパニー長は家庭用ミシンを「唯一のBツーC(対消費者)事業」と語る。そのため利用者との接点強化にも取り組む。21年5月には会員制交流サイト(SNS)のライブ配信機能を活用して創作集会を実施した。本社(東京都多摩市)の会議室に配信スタジオを設置。製作物の作り方やミシンの使い方などを発信するとともに、利用者からの質疑にも対応した。「直接つながることで要望を把握できる。商品の開発に役立てたい」(斉藤カンパニー長)という。こうした地道な活動が浸透し、SNSのフォロワーはこの1年間で5割増の3万人に拡大した。

工業用で培った品質の良さがJUKIの家庭用ミシンの差別化ポイントだが、「家庭用の新しい機能を工業用にも組み込みたい」と強調するのは縫製機器&システムユニット長を務める石橋次郎常務執行役員。操作のしやすさが求められるのは工業用も家庭用も同じ。家庭用の製品価値を高めることで、工業用との相乗効果を生み出し、より競争力のあるブランドを目指す。

日刊工業新聞2021年6月14日

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