海底探査のコストが下がる!東大が開発した自律型音響測位ブイの実力
東京大学の巻俊宏准教授らの研究グループは、低コストの自律型音響測位ブイ「BUTTORI(ブットリ)」を開発した。海上に浮かべて水中のロボットに向けて測位用の信号を送る。海流や風があっても自動で同じ場所に留まる。推進装置のスラスターなど構成部品数を少なくすることで、従来機に比べて価格を大幅に抑えた。海底探査のコストを下げることにつながる。
海上で全地球測位システム(GPS)から位置情報を受け取り、水中のロボットに相対位置の音響信号を送る。スラスター3機により同じ場所に留まったり、水中のロボットを追いかけたりできる。実海域で試験すると潮に流されず、直径80センチメートル程度のポイントに停留できた。
ブットリからの信号が届く範囲は500メートル。水中ロボに見立てた音響トランスポンダの位置を測ったところ、水深15メートル、水平方向に70メートルの位置でも測位できた。角度で78度と広角の測位範囲を確かめた。ブットリ1台から複数の水中ロボに位置情報を送り、協調して動くことができる。
ブットリはミニバンなどで運べ、海上投入用クレーンも不要。船型の自律型音響測位システムに比べて簡便に運用できる。価格も船型の自律システムは数千万円台だが、ブットリは200万―300万円程度で構成できるという。
水中ロボは小型化が進み、複数のロボを運用して広いエリアを調査するシステムが開発されている。そのため1機当たりの運用負荷を下げることが求められていた。今後、ブットリと水中ロボ10台を連携させるなどシステム化を進める。
日刊工業新聞2021年6月10日