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東芝が“車谷退場人事”の清算急ぐ、組織立て直しの切り札は元幹部の呼び戻し?

東芝が“車谷退場人事”の清算急ぐ、組織立て直しの切り札は元幹部の呼び戻し?

オンライン会見で話す東芝の綱川社長兼CEO(14日)

東芝は4月に退任した車谷暢昭前社長兼最高経営責任者(CEO)が在任中に行った“車谷人事”の清算を急ぐ。6―7月にグループ会社へ出向していた元デバイス担当トップらを相次ぎ呼び戻し、一部疲弊していた組織を立て直す。製造業にとって働く従業員の士気こそが競争力の源泉であり、復帰した綱川智社長兼CEOの最初にして最大の仕事となりそうだ。(編集委員・鈴木岳志)

東芝は14日に2021年度の幹部人事を発表した。その中に、グループの旅行代理店である東芝ツーリスト(横浜市港北区)社長の福地浩志氏が東芝本体の執行役員上席常務(アジア・大洋州総代表)に復帰する人事が含まれていた。福地氏はもともと19年度まで東芝で半導体・ハードディスク駆動装置(HDD)担当の執行役上席常務を務め、半導体事業の人員削減など構造改革に奔走していた。

20年4月からの旅行代理店への異動は唐突で転出先も異例であり、当時から「車谷さんの不興を買ったために飛ばされた」とのうわさが立った。真相は不明だが、車谷社長の退任後に東芝本体へ帰還することが決まった。

同じように、現在米州総代表の和田あゆみ執行役員常務も“本職”だった内部監査部・監査委員会室関係の担当に復帰する。法務畑の和田執行役員常務は19年12月まで執行役常務(内部管理体制推進部・法務部担当)だったが、突然米州総代表へ担当替えされた過去があった。

18年4月に会長兼CEOとして招聘(しょうへい)された三井住友銀行出身の車谷前社長は、強烈なリーダーシップにより経営再建途上だった東芝を復活させた功績は大きい。

ただ、一部トップダウン型の行き過ぎた経営スタイルは社内に歪みを生んだことは確かだ。21年年初に社内の幹部を対象に実施した車谷氏への信任調査で「不信任」の回答が過半を占めた事実からも明らかだ。

14日のオンライン会見に出席した綱川社長は「全てのステークホルダーとの信頼関係の再構築」を今後の経営方針に掲げた。これは対立が激化していたアクティビスト(物言う株主)など大株主だけではなく、疲弊した従業員に向けたメッセージでもある。


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日刊工業新聞2021年5月18日

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